子どもの心ケア模索 「サポート」から「自己回復」型へ 県教委

西日本新聞 熊本版 壇 知里

7月上旬、熊本地震の体験を共有する公開授業を受ける益城中の生徒たち。県教委の関係者も視察した 拡大

7月上旬、熊本地震の体験を共有する公開授業を受ける益城中の生徒たち。県教委の関係者も視察した

 熊本地震の発生から3年5カ月。県教育委員会の「心のケアサポート会議」が取り組むケアのあり方が、カウンセラーによる「サポート型」から、自分でストレスに対処する「自己回復型」へと変わろうとしている。東日本大震災の被災地での取り組みも参考にしながら、学校現場では模索が続く。

 7月上旬、益城町の益城中でサポート会議の公開授業が行われた。「無理に話さなくていいです。気分が悪くなったら近くの先生に声を掛けてください」と担任の男性教諭(42)。2年7組の生徒たちが5、6人の班に分かれ、被災体験や仮設住宅での暮らしなどについて話した。

 「家が壊れ、思い出がなくなってつらかった」「地震後に見つかった笑顔の写真に救われたから、笑顔ってすごい」「兄弟とサイクリングに行くなど楽しい時間を作るようにした」。それぞれが、心の傷や心の支えになった出来事を共有し合った。

 サポート会議は地震直後の2016年5月に発足。県教委が主管し、臨床心理士、児童精神科医など専門家も加わる。同月から益城町など被害の大きい地域の全公立小中高、特別支援学校にスクールカウンセラー(SC)を配置。毎年3回程度、全般的なストレスをチェックするアンケートを行い、ケアが必要な子どもの把握に努めている。

 当初、会議は4年間の期限付きだった。しかし、今年5~6月のアンケートでも、調査対象の児童生徒約17万3千人のうち、1・08%に当たる1882人が「ケアが必要」と判定されるなどしており、活動に期限を設けないことを7月に決めた。

 ただ、地震発生3年が過ぎ、県教委は「次の段階に進む時期に来た」と判断。子ども自身が心の傷に向き合い、回復していく「セルフケア」への取り組みに軸足を移そうとしている。益城中での公開授業をそのモデルと位置づけるが、具体的な取り組みは各学校に委ねるとしている。

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 「災害の記憶はいつ、どんな形で子どもたちに影響を及ぼすか分からない。だからこそ、自分で自分の気持ちをコントロールする力や居場所を持ってほしい」。兵庫県立大大学院の冨永良喜教授(災害臨床心理学)は熊本地震、東日本大震災(11年)の両被災地で自治体と協力しながら子どものケアに取り組んできた経験から、こう指摘する。

 岩手県では震災発生直後から、公立の全小中高校生を対象に、自己肯定感の育て方やストレス対処法を学ぶ「心のサポート授業」を展開。子ども同士での体験の共有はあえてせず、呼吸の整え方やストレッチの仕方、トラウマ反応への対処法など、専門的な知識を提供し、自らの心の傷に向き合う力の育成に力点を置いてきたという。

 福島県では震災から7年が過ぎた昨年、無料通信アプリLINE(ライン)を活用した相談事業を始めた。同県教委の担当者は「地震の体験はとてもデリケート。容易には聞けないからこそ、子どもたちが気軽にアクセスできる窓口は重要」と話す。

 カウンセラーによるきめ細かなサポートの必要性を訴える声も根強い。南阿蘇村や益城町でSCを務める作永由美子さん(41)は「子どもたちの状況は日々変化していく。寄り添い続けることが大切」と話す。最近のカウンセリングでは、現在の友人関係など日常の話がほとんど。「特別なケアをするより『大切にされている』という実感を与えることが重要」と強調した。 (壇知里)

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