明治時代に「天保老人」という言葉があった…

西日本新聞 オピニオン面

 明治時代に「天保老人」という言葉があった。天保とは江戸晩期の年号である。開国して文明開化の世になったのに、なお頑迷で新時代になじめない天保生まれの老人たちを指したという

▼特に社会が大きく変わるとき、旧世代の順応は遅れてしまうもの。先の敗戦時もそうだった。「戦前」を否定する価値観の大転換に、付いていけないのは年配者の方だった

▼そして現代も。デジタル化、IT化が猛スピードで進む社会に昭和の老人たちが取り残されていくようだ。来る消費税増税。政府は「キャッシュレス決済でポイント還元」とPRする。さて、どれほどの高齢者が制度を理解して使いこなせるのか。お年寄りの実情を無視した政策だろう

▼今日は敬老の日。家にいれば、かかる電話はあの手この手の詐欺話。といって外で車を走らせれば、高齢ドライバーと危険視される。現金での買い物はお得感ゼロ。浮世がさぞ多難な憂き世に感じることと拝察しつつ、人生の先輩方に深甚からの敬意を表したい

▼源平の盛衰を描いた「平家物語」に馬の逸話がある。一ノ谷の合戦へ向かう源義経の軍勢が山中で迷いかけた時、武者が進言した。「老馬の手綱を放して先に追い立てれば必ず道へ出ます」

▼人生経験を重ねた年長者には、難局を乗り切る知恵がある。中国にも同様の故事があるそうだ。これまでに蓄えた「智」の数々。地域に、社会に還元を願いたい。

PR

春秋(オピニオン) アクセスランキング

PR

注目のテーマ