中洲歓楽街近く 夜間保育所の素顔 ルポ「真夜中の陽だまり」出版 熊本出身ライター 三宅玲子さん 密着3年間 情熱と課題、丹念に

西日本新聞 くらし面 本田 彩子

第2どろんこ夜間保育園は夜遅くまで明かりがともっている=6日、福岡市博多区 拡大

第2どろんこ夜間保育園は夜遅くまで明かりがともっている=6日、福岡市博多区

著者の三宅玲子さん

 九州最大の歓楽街・中洲にほど近い所にある認可保育所「第2どろんこ夜間保育園」を舞台に、深夜や未明に子どもを預かる夜間保育所のありようを描いたルポ「真夜中の陽だまり」(文芸春秋、1620円)が今月、出版された。熊本市出身のノンフィクションライター三宅玲子さん(52)=東京都=が約3年間、同園に密着し、夜に働く親と子どもを支える園の姿を描いた。夜間保育所の数が少ないため、多くの子どもが認可外施設で夜を過ごし、行政が看過している現状にも切り込んでいる。

 「どろんこ」の卒園児を含む8組の親子が登場する。中洲のクラブでホステスをしながら息子を育てる未婚の母、深夜にラーメン店を営むシングルファーザー、深夜勤務に追われるマスコミ社員-。夜間保育所がなければ、働き続けることができなかった親たちだ。

 子どもの自主性を育むとされるモンテッソーリ教育を取り入れ、食事は和食にこだわる。延長保育は午前2時まで。さまざまな事情を抱える親に、職員たちは温かく、時に厳しい言葉を掛けながら親密な関係を築いていく。親を支えることにも力を注ぐ園を、三宅さんは<規格外の保育園>と表現する。

 夜間保育所はもともと、子どもだけで夜を過ごしているのを見かねた有志らが各地で託児所として始めた。1973年開設のどろんこの前身もその一つ。70年代末にベビーホテルで死亡事故が相次ぎ、劣悪な保育環境が社会問題になったことで、81年に児童福祉法が改正された。面積や職員配置の基準を満たした施設を夜間保育所として認可し、昼間の保育所と同様に補助金を出す制度が始まった。

 午前11時から午後10時を基本時間とし、延長で実質24時間預かれる。ただ、その数は2018年4月時点で81カ所。当初、旧厚生省が目標として示した200カ所にはほど遠い。夜勤者の人件費が補助金では十分賄えない上に、保育士不足、保育業界内でさえ根深い「深夜の保育は子どもによくない」との考え方が影響している。そう三宅さんは指摘する。

 <一方のベビーホテルはこの40年でおよそ3倍、1749施設に増えた。約3万2500人の子どもが預けられている>。認可外施設が受け皿となっている現状も告発する。孤立した親子を支えようと、低収益でも24時間奮闘する施設もあるが、仮眠できずに職員が体をこわしたり、子どもを大勢預かり安全性が確保されていなかったりする施設もある。十分な実態調査を行わないまま「夜間のニーズがないと動けない」と繰り返す消極的な行政の姿勢も、浮き彫りにしている。

 どろんこの天久薫理事長(69)は、夜に働く親と子は保育制度の網の目からこぼれた状態で「福祉の谷間」とする。「夜に預けるのは悪いと言う前に、どの子も保育を受ける権利が平等にあるのに、受けられていない現実を知ってほしい」

 自身も2人の娘がいる三宅さんは、どろんこの建て替えに当たった建築家の取材で夜間保育所の存在を知り、突き動かされるようにして書いたという。「深夜に働きながら子育てする親に、世間の関心は薄く、冷たい。そんな親子を100パーセント受け入れ、支え続けるどろんこ保育園は衝撃で、親としてうらやましくも感じた」と話している。
 (本田彩子)

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