【きょうのテーマ】デザインの魅力 野老さんと体験 佐賀・有田でワークショップ こども記者も参加

西日本新聞 こども面

 ●つながる・つなげる 「正解」がない面白さ

 2020年の東京五輪・パラリンピック公式エンブレムをデザインした美術家、野老朝雄さん(50)が8月、日本を代表する焼き物の一つ「有田焼」で知られる佐賀県有田町の九州陶磁文化館で子ども向けのワークショップを開催しました。公式エンブレムは、江戸時代にはやった「市松模様」とよばれるチェック柄を基にした「組市松紋」といわれるデザインで、決まったときは、大きな話題となりました。ワークショップには、こども記者5人も参加、デザインの面白さを実感するとともに野老さんに作品に込めた思いなども聞きました。

【紙面PDF】きょうのテーマ=デザインの魅力 野老さんと体験

 ワークショップは9月20日から同館で始まる、野老さんがデザインした有田焼の作品を紹介する展覧会にちなんで同館が企画した。

 館に着くと学芸課係長の藤原友子さんが、有田焼の歴史や技法を紹介するコーナーを案内してくれた。藤原さんは「有田焼には400年以上の歴史があり、海外にも多くの愛好家がいる」と教えてくれた。有田焼の作品に触ってみた。硬くつややかで、指ではじくとチーンと澄んだ音がした。

 展示室には有田焼を代表する名品が並んでいた。深い藍色で染められた皿を見た。野老さんが手掛けた東京五輪のエンブレムの藍色と重なった。

 ■人の数だけ形が

 ワークショップには私たちを含む小中学生20人が参加。会場に現れた野老さんの第一印象は「優しそうなクマさん」だった。

 「今日はお皿をデザインします。テーマは“つながる・つなげる”です」と野老さんは参加者に呼び掛けた。自身の名前をもじった「トコロパターン」と名付けた、模様の入った正三角形と正方形各6枚のパーツを白板に貼り付け、正12角形で真ん中が正六角形にくりぬかれた図形を作った。野老さんはさまざまにパーツを並べ替えた。常に模様がつながることに驚いた。

 私たちも小さなサイズのトコロパターンをもらい、パーツを切り取った。野老さんは参加者に「デザインに正解はありません」と声を掛けた。「自由にやればいい」と思うとさまざまなアイデアがわいた。パーツの配列を決めて台紙に貼り、色を塗って完成させた。

 白板に全員の作品が貼られた。それぞれ違う作風だった。野老さんは「みんなの個性がよく出ている。人の数だけつながりの形があります」とほほ笑んだ。

 ■作品に願い込め

 野老さんは「つながる・つなげる」デザインは「自分のライフワーク」と言う。理由を聞くと「2001年にアメリカで起こった同時多発テロがきっかけでした」と話した。「バラバラになった人や世界をもう一度つなげたい」という願いを込めて作品を作り続け、その一つの到達点が東京五輪のエンブレムだった。

 私たちもワークショップを経験したことでお互いが近くなった気がした。「デザインには人をつなぐ力がある」とつくづく思った。

 ●「ふと思考が脱線すると新たな発想が…」

 野老さんは建築家の父親、内装デザイナーの母親の間に東京都で生まれた。

 仕事で挫折した経験を聞くと「しょっちゅう挫折している。新しいアイデアがわくと立ち直れる」。どんな時にアイデアがわくのか。「真剣に何かを考えている時に、ふと思考が脱線すると新たな発想が生まれる」そうだ。仕事で大事にしているのは「自分の寿命以上に後世に残るデザインを生み出すこと」だ。

 東京五輪のエンブレムはなぜ青(藍)一色なのか。「青は海や空の色。神秘的で色があせにくい強さもある。東京は色であふれている。青一色が目立つと考えた」。有田焼への思いを聞くと「2016年に皿をデザインする仕事で有田に来た。藍染めの有田焼に惹かれ、新たな魅力を創造したいと思った」と答え「有田は町並や人も面白い。さらに魅力を探りたい」

 名字の由来を聞くと「イモの名前です」。根が長くヒゲの生えた老人のように見えるイモらしい。「ご先祖がこのイモを育てていたのかも。江戸時代に有田が大飢饉に襲われた時、人々の食べ物になり命を救ったイモと聞き驚きました」

 ◇[有田×野老]展 20日~11月24日。観覧料は大人600円、大学生300円、高校生以下無料。休館日など問い合わせは同館=0955(43)3681。

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