善意に生きる希望 熊本地震でホームレス ワタシペディア「私」事典~「老春」グラフィティ(1)

西日本新聞 吉田 真紀

 今や日本の総人口の4人に1人が高齢者。2040年には3人に1人に達するとの推計もある。平均寿命は延び続け、65歳は人生の折り返し地点と言っても過言ではない「人生100年時代」に突入した。生き方は多様化し、悩みも楽しみも十人十色。ある辞書によれば、青春ならぬ「老春」とは〈高齢者が青年のように若々しくしていること〉。幸せを追い求める人々の、枯れることない「老春グラフィティ」をのぞいてみる。(吉田真紀)

 秋の気配を感じるようになった福岡市・天神のベンチで、竹田俊徳さん(66)は一日の大半を過ごす。一緒に夏をしのいだ相棒は大きめのペットボトル。麦茶のパックを入れて、水を注いでいる。非常食で膨らんだスポーツバッグも着替えが入ったリュックも、眼鏡も傘もつえも全てがもらい物か拾い物だ。ホームレスになってもうすぐ1年。「信じられないかもしれませんが、人生で今が一番幸せだと思っとります」

 国立大卒業後、友人が経営する四国のレジャーセンターに約20年勤めた。熊本市に暮らす大正生まれの両親の体調が優れず、仕事を辞めて帰郷したのは50代。「僕は独身で身軽だから、両親をみとるのが宿命だと」。代々守ってきた築100年超の実家で親子3人、5年の時を過ごした。

 思い出は、行き当たりばったりのボロ車の旅。寝泊まり可能な7人乗りのワゴン車に両親を乗せ、毎日のように、「行ってみたい」という場所に連れて行った。ちょっとそこまでのつもりが1週間になることも。北は青森から南は鹿児島まで、日本列島を縦断する距離を走った。無口な父が「なんか、あの山きれいじゃないか」と身を乗り出した南アルプス。母が感嘆の声を上げた初めての金閣寺。費用は全て親持ちだったが「せめてもの親孝行になったかな」。その後、入院した父と母は「3年くらいの間に、ぽんぽんと逝っちゃった」。最期の瞬間まで目をそらさずに見届けた。今は涙を流さず生きるため、両親を思い出すことをずっと避け続けている。

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