「ラグビーW杯歓迎」反則? 商標権、厳しい規制 開催地 PRに工夫重ね

西日本新聞 一面 坂本 信博 金沢 皓介

商標権侵害などに該当する可能性が高い表記 拡大

商標権侵害などに該当する可能性が高い表記

問題にならないとみられる表示・行為 「OneRugby,OneOita」と掲げた開幕100日前に向けたイベント=6月、大分市(大分県提供)

 九州でも試合が行われるラグビーワールドカップ(W杯)日本大会開幕まであと2日。急ピッチで準備が進む中、札幌市でスポーツバーを営む男性から「『W杯歓迎』と掲げちゃ駄目って、変ではないか」との疑問が寄せられた。大会名を使いたくても何かと制約が多いという。W杯を盛り上げたいのに、どうして?

 北海道ラグビー協会と北海道新聞は7月、第1回大会から取材を続けてきたスポーツライター藤島大さん(58)の講演会を札幌市で開いた。タイトルは当初「ワールドカップ日本大会に向けて」だったが、「藤島大さん講演会」に差し替わった。市のW杯担当者から「『ラグビーW杯』は避けた方がいい」と求められたからだ。藤島さんの著書の宣伝と解釈される恐れがあるという。

 ここまで神経質になるのは資金を拠出するスポンサー企業の権利保護のため、大会名やロゴの無断使用が禁じられているからだ。主催するラグビーワールドカップリミテッドは、ロゴやマスコットなど21件を日本で商標登録している。

 例えばW杯開催地付近の商店街やイベント会場で、「ラグビーワールドカップ」と掲げるだけで商標権侵害に当たる可能性がある。

 大会名やロゴの無断使用は「アンブッシュ・マーケティング(不正便乗商法)」と呼ばれ、1984年のロサンゼルス五輪以来、国際スポーツ大会で規制され、強化されてきた。

 こうしたルールについては、実は日本大会の組織委員会内部でも微妙に見解が割れる。法務部は「W杯を関連づけたり、想起させたりする広告・営業活動は該当する」。一方で「大会が盛り上がればスポンサーの利益にもなる」(幹部)と柔軟な声も聞かれる。

      ■

 制約がある中、盛り上げるにはどうしたらいいか。W杯の開催地では、さまざまな工夫がみられる。

 東日本大震災の被災地で唯一2試合を行う岩手県釜石市では、大会名やロゴを使わずにラグビーのまちをPRできるよう、独自に「釜石ラグビー」のロゴを考案。タオルや帽子などの商品がW杯ロゴ入りの公式グッズとともに店頭に並ぶ。

 釜石まちづくり株式会社の下村達志事業部長は「釜石のロゴはW杯終了後も見据えた『ラグビーのまち』としての取り組みにつながる」と説明。その上で「ルールは分かるが、草の根的な活動を進める上で許容範囲が広がれば、より盛り上がるのでは」と語る。

      ■

 九州はどうか。大分県は釜石市と同様に、独自のキャッチフレーズ「One Rugby,One Oita(ラグビーで大分を一つに)」を考案した。県ラグビーワールドカップ2019推進課は「『W杯を応援』とは言えないので、競技としてラグビーを盛り上げる文言にした」。商標登録して民間にも無償でイベントや商品のパッケージに使うことを許容。W杯後も続けて使う考えだ。

 ラグビーワールドカップ2019福岡開催推進委員会の場合、W杯開催100日前のイベントには商標権侵害に当たらない「ラグビーサマーフェスタ」、500日前と1年前には商標権のルールに従い「ラグビーW杯2019」と命名。担当者は「節目の催しと、そうではない応援イベントを切り分けた」と言う。

 熊本県にも大会名使用に関する質問が届いている。県の担当者は「商標権はデリケート。開催都市に判断する権限はない」。福岡と同じくイベント名を使い分けているという。

 W杯のPRには国内外で人気のキャラクター「くまモン」などご当地キャラも単体では使えず、大会公式マスコットの「レンジー」とのセットが必須。W杯に直接触れることなく、日の丸カラーのジャージー姿やラグビーボールを持ったくまモンのイラストを商品に添えるなど、民間業者が知恵を絞っているという。 (北海道新聞・柳沢郷介、岩手日報・川端章子、西日本新聞・金沢皓介、坂本信博)

福岡県の天気予報

PR

PR

注目のテーマ