【ラガーマン記者が読み解くW杯】ゼロからラグビー(3)スクラム 数センチの戦いに何の意味?

西日本新聞 入江 剛史

 ラグビーといえば、体が大きなフォワード(FW)の選手が組み合うスクラムが醍醐味(だいごみ)の一つ。試合のポイントとしてスクラムの優劣がよく挙げられるが、長さ約100メートルのグラウンドでトライを奪い合うのに、密集でのセンチ単位の戦いに何の意味があるのか。

 ラグビーは15人対15人で戦う。15人のうち8人がFWで、残りの7人がバックス(BK)。ボールを前に落とす「ノッコン」など軽い反則があると、FW8人でスクラムを組む。 

 まず、相手と直接組み合う最前列の選手3人(1~3番)がいて、その選手のお尻を4人(4~7番)が押し、さらに最後方に1人(8番)がつく。BKのスクラムハーフ(9番)が両チームの間にボールを転がして入れ、最前列3人の真ん中のフッカー(2番)がボールを足でかいて後方に運び、スクラム最後方からスクラムハーフが持ち出す。斜め後方にラインをつくる他のBKにパスしたり、自ら走ったり、蹴ったりする。

 ボールを投入するのはノッコンなどの反則をしていない方のチーム。ボールを着実に確保して次の攻撃につなげたいところだ。

 スクラムの勝負は数センチから始まる。最前列の選手は相手と首や肩がぎりぎりで触れない位置から、レフェリーの合図で当たる。仮に4センチの間があるとすれば、半分の2センチより、さらに前で組めれば優位となる。体が伸び、後ろで押す選手の力が伝わりやすくなる。逆に遅れて受けると、体が詰まったような状態になる。

 相手チームがボールを投入するスクラムならば、一気に押し込んで相手ボールを奪えればベスト。ボールを取れなくても、押し込むことで、スクラム後方につく相手のFW選手(6~8番)は圧力に対抗することに意識が向く。スクラムからボールが出れば、すぐに離れてBKのサポートをしたいが、その動きが鈍る。

 自チームのボールでも押し込めば有効だ。スクラムはFW8人が1カ所に集まっているため、それ以外の横幅約70メートルという広いスペースでBK同士7人対7人の勝負となる。スクラムを押せば、ボールが出た瞬間にスクラム後方から防御に回ろうとする相手のFW選手(6~8番)の出足が止まる。スクラムハーフでなく、突破役のFWのナンバーエイト(8番)が持ち出す選択肢もあり、スクラム周辺で突進を図れば、相手のFW選手のタックルが届かず、さらに優位な状況になることもある。

 最前線の数センチの戦いを制し、スクラムを押し込み、広いスペースに展開して何十メートルも前進する。攻撃の起点としてスクラムの攻防は見逃せない。(入江剛史)
(随時連載します)


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 いりえ・つよし 福岡高でラグビーを始め、早稲田大でスクラム最前列のプロップとして公式戦出場。西日本新聞入社後は旧朝倉農業高(福岡県)、福岡高、大分東明高などでコーチを務める。ラグビーワールドカップ日本大会を1年後に控えた昨年夏、九州で唯一、キャンプ地にも試合会場にもなっていない佐賀に赴任。ただ、小学生の息子が佐賀でラグビーを始め、週末の練習が楽しみで仕方がない。録画した試合を見ながらの晩酌がほぼ日課。46歳。


 

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