食べる、人生の喜び 誤嚥防ぐ工夫 特養栄養士が講座 調理や姿勢 在宅介護の一助に

西日本新聞 くらし面 三宅 大介

「まずは対面に座ってみて」。食事介助の体験をする参加者を、笑顔で見守る池田玉恵さん(中央)=3日 拡大

「まずは対面に座ってみて」。食事介助の体験をする参加者を、笑顔で見守る池田玉恵さん(中央)=3日

食事介助の注意点

 いくつになっても、食事は人生の楽しみの一つ。たとえ自宅で介護が必要になっても-。のみ込む力が弱くなりがちなお年寄り向けの食事講座が、福岡市西区の壱岐公民館であった。

 誤嚥(ごえん)を防ぐ調理の工夫や姿勢、介助の方法まで。講師を務めたのは、近くの特別養護老人ホーム(特養)「なの国」の管理栄養士、池田玉恵さん(45)。

 だれもが、できれば住み慣れた家で暮らし続けたい。こうしたニーズにこたえようと、施設に勤める介護のプロが、その技術を自宅などで生かしてもらう地域貢献活動の一環だ。

 ●筋力低下の悪循環

 この日は地元「拾六町団地西の一町内会」の高齢者向けサロン「和(なごみ)」のメンバーや公民館を利用する15人が参加。同特養での勤務が5年目となる池田さんが、日ごろ入所者を世話するなかで、自らまとめたノウハウやレシピを元に、試食体験も交えて「伝授」した。

 年を取ったり病気になったりすると、のみ込みづらくなる。のみ込みは喉だけでなく全身の筋肉を使うため「食べられなくなり筋力が衰えると体を動かすのもつらくなり、さらに筋力も低下する」(池田さん)。

 むせて食べ物や水分の一部が、食道ではなく肺に流れてしまう誤嚥を起こすと、口の中の細菌も入り、肺炎を起こす可能性もある。こうしたリスクを避けるため「のみ込みやすい食事形態や食べ方、姿勢など工夫が必要」になるわけだ。

 ●適度な「とろみ」を

 まず水分は「サラサラでは摂取しにくい」ため、市販のとろみ剤を使ってとろみをつける。合わない人にはお茶でもゼラチンなどでゼリー状にする。汁物もとろみをつけるが「とろろ昆布やオクラ、芋類など粘りのある食材を使うこともできます」と池田さん。

 食事は、かまぼこやリンゴ、ゆで卵の黄身など「口の中でバラバラになるもの」がむせやすい。のりやキュウリのスライスなども口の中に張り付きやすく、パン類やカステラなど「ぱさつくもの」も食べにくい。

 のみ込みやすくする工夫としては、ご飯は水分を多めに、パンは牛乳やスープに浸し、麺は短く切る。肉や魚は脂の多いものを薄切りにし、野菜も硬い皮はむき、いずれも軟らかく調理する。ゆで卵は半熟、のりはつくだ煮、キュウリは塩もみしてしんなりさせた方が「危険が少ない」。特にのみ込む力の弱い人には「適度に粘度があって、舌の上で塊にしやすく、べたつかず、密度が均一であること」が重要という。

 専用器具を使って刻んだりペースト食にしたりする方法が一般的だが、最近は、一度細かくした食材をゲル化剤で固め、見た目の彩りや香りを良くしたムース食なども含め、レトルト商品や配食サービスがある。

 池田さんは「無理せず利用してもらえれば」。在宅生活を続けるための“手抜き”もアドバイスする。

 ●向き合うと威圧感

 食べる姿勢が安定しないと、食べ物を口にうまく運べず誤嚥につながる。「顎が上がらないよう」背もたれのある椅子に深く腰掛けて背筋を伸ばす。足が浮いた状態だと力が入りづらいため、椅子の高さは「足をしっかり床につけられるかどうか」に気を付けたい。

 向き合って食事すると「相手から威圧感があり、せかされるように感じる」こともあるため、介助者は横や斜めに座るのが良い。口に入れたスプーンを、上唇にこすりつけるように引き抜くと顎が上がりむせてしまうため、真っすぐ引き抜く。1回の食事時間は20~40分のペースが「のみ込みに疲れずに済む」という。

 実際に2人組になり、食事介助を体験した参加者たち。サロン代表の曽川富士子さん(57)は「介護する側、される側になったときも楽しくおいしく食事できるヒントをもらった」と笑顔。町内会長の村上月男さん(71)は「地元の世帯のうち4割が高齢者。ノウハウを学べるこうした素晴らしい機会を増やしていきたい」とうなずく。

 入所が必要になっても、望む施設に簡単に入れるわけではない。在宅介護の一助となる試みが一層、求められている。

 (三宅大介)

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