辛辣な原発風刺、爆笑の先の問い 映画「ニッポニアニッポン」 監督「おかしいことはおかしい」

西日本新聞 吉田 昭一郎

映画「ニッポニアニッポン―フクシマ狂詩曲」の一場面。写真はいずれもⓒラピュタ阿佐ヶ谷 アート・アニメーションのちいさな学校 拡大

映画「ニッポニアニッポン―フクシマ狂詩曲」の一場面。写真はいずれもⓒラピュタ阿佐ヶ谷 アート・アニメーションのちいさな学校

才谷遼監督 「ニッポニアニッポン―フクシマ狂詩曲」の一場面

 福島第1原発事故から8年半。業務上過失致死傷罪で強制起訴された東京電力の旧経営陣3人に19日、無罪が言い渡された。だが、福島県では帰還困難区域の立ち入り規制が続き、なお4万人以上が避難生活を続ける。汚染水の処理問題など収束にはほど遠く、決して事故を水に流すことはできない。そんな今を、ミュージカル仕立てのエンターテインメントとして描く映画「ニッポニアニッポン-フクシマ狂詩曲」が、全国各地で公開されている。辛辣(しんらつ)な皮肉で見る者を爆笑させつつ、深く問題を問い掛けてくる異色の問題作だ。(吉田昭一郎)

 復興事業の進捗(しんちょく)がアピールされ、「復興五輪」をうたう東京五輪へムードが盛り上がる一方で、その裏側では将来見通しが立たない多くの被災者がいる。

 映画の物語は、定年間際の福島県会津若松市の職員、楠穀平(隆大介)が原発最前線の自治体に出向し、助役の村井(寺田農)の案内で実際の南相馬市や楢葉、浪江両町、飯舘村などを回り、復興途上の厳しい現実におののく。

 実写映像とともに、どたばた喜劇のようなミュージカル仕立ての歌と踊り、さらに数多くのアニメーションを織り込む世界は、風刺やブラックユーモアがまぶされ、エキセントリックで奇想天外。タブーに触れるような描写もある。太りに太ったノミなどアニメの隠喩も盛りだくさん。

 楠は、村井らと原発関連の産学政官が集う大宴会に出席する。事故当初の脱原発から、いつのまにか原発が復権し、原発政策が事故前に逆戻りするかのような動きを祝い、歌と踊りが繰り広げられる。

 近い将来、貯水タンクが満杯になる、放射性物質トリチウム含みの「処理水」を海洋放出する案が堂々と持ち上がる。核のごみの捨て場所も決まらぬまま、原発が再稼働され、新増設や建て替えを求める声さえ上がる。映画では、そんな動きを、やんややんやと全面肯定して盛り上がる。

 〈万が一失敗したとして/責任なんて誰も取らない〉〈そうだろ見てくれ福1を/1基や2基の爆発で/つぶしてなるか原発政策/つぶしてなるか原発利権〉

 その大合唱の描写は、強烈なあてこすりに違いなく、むきだしの酔狂ぶりに爆笑せずにいられない。そして、笑った先でふと、深刻な問題の在りかを再確認するのである。

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