豚のぼうこうと楕円球 田代 芳樹

西日本新聞 オピニオン面 田代 芳樹

 ラグビーを好きになったのは極めて単純な理由だ。高校1年だった1975年1月、全国高校選手権で地元の大分舞鶴が悲願の初優勝を成し遂げたのがきっかけだった。

 通う学校は違ったが、同世代の活躍に胸が躍った。

 学生時代は、母校の同志社大が大学選手権で3連覇をした時期と重なり、競技場にもよく足を運んだ。

 試合観戦を重ねるうちに、素朴な疑問も湧いてきた。

 中でも最大の謎は、なぜラグビーはサッカーやバスケットボールなどと違って、使用球が楕円(だえん)なのか、ということだった。諸説がある中で、よく知られているのは「豚のぼうこう」説である。

 草創期のボールは重くて弾まず、選手に不評だった。そこで、適度に弾力があって重さも軽い豚のぼうこうが注目された。空気を入れて膨らませると楕円形になった。

 牛の皮などで補強した楕円球は思わぬ方向に跳ねて、試合を面白くした。足で蹴るより手を使うプレーも多く、楕円の方が抱えやすいこともあって定着したとされる。

 ボールの弾み方一つで、時には勝敗の行方さえも左右してしまう。思うようにはいかない「人生」と重ね合わせて語られることも少なくない。

 相手ゴールにボールを持ち込んで地面に付けることで得点になる「トライ」も不思議な言い方だと思った。

 トライは本来、ゴールを狙うキックの挑戦権を得ることを意味したという。ゴールが成功して初めて得点になったわけだ。いくらトライをしても、キックが決まらなければ得点にならない。結果、トライ数で劣るチームがゴールを決めて勝つこともあった。

 これでは勝負の意義が薄れてしまう。そこでトライでも得点になるようにし、ルール変更を重ねて今の5点になった。苦労して取ったトライの価値を考えると、当然の流れなのかもしれない。

 こんな競技の成り立ちに目を向けると、ひいきチームの勝ち負けにとどまらず、別の楽しみ方も見えてくる。

 ワールドカップ(W杯)日本大会がいよいよ20日、開幕する。九州では福岡、熊本、大分の3市で計10試合が開催される。26日、福岡での1次リーグ(プール戦)、イタリア対カナダ戦を皮切りに10月2日=福岡、大分▽5日=大分▽6日=熊本▽9日=大分▽12日=福岡▽13日=熊本と続き、19、20日はいずれも準々決勝が大分である。

 アジアで初めての開催となる大会で、楕円球がどのような物語を織りなすのか。一ファンとして目が離せない。
 (デジタル編集チーム)

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