懸け橋荒波を越えて(下) 自分で考え つなぐ種を 就職支援

西日本新聞 国際面 江藤 俊哉

「私たち民間の人間が動かなければならない」と語る金崇寛さん 拡大

「私たち民間の人間が動かなければならない」と語る金崇寛さん

 7月8日に始まった6週間のインターンシップ期間は残り1週間を切っていた。18人の参加学生のうち女性1人が突然、韓国に帰ると言い出した。「親が『危ないから帰ってこい』と。残念ですが…」。だが彼女はこうも告げた。「日本企業への就職は諦めません。この1カ月でますます日本が好きになりましたから」

 福岡市に事務所を構える就職支援会社「ジェイ・ケイ・コネクト」(東京)は昨年から韓国慶尚北道の委託を受けて同道の学生を福岡県内の企業で就業体験させる事業に携わり、学生の選抜や教育などの業務を担う。昨年は20人中14人が受け入れ先企業に採用された。2年目の今年は、直前に日本が韓国への輸出規制強化を決定。日韓関係はみるみる悪化した。

 事業を発案した同社取締役の金崇寛(キムスングァン)さん(34)は期間中、影響がないか学生や企業に尋ねた。「皆さんから『大変だね』『日本を嫌いにならないで』と励まされた」。そんな中、女性が途中帰国。「国同士の話はどうしようもないが、『どうしようもない』で済ませたくない思いも強まった」

 同県水巻町出身の金さんは韓国籍の在日3世。民族教育は受けなかったが、高校卒業後「まだ見ぬ父に会う気持ち」でソウルの大学に留学した。在学中の2008年、留学仲間と会社を設立。社名に「ジェイ」(ジャパン)と「ケイ」(コリア)を「コネクト」(つなぐ)との思いを込めた。

 これまでに日本企業につないだ韓国の若者は500人以上。だが日韓関係悪化の逆風は厳しい。11月に慶尚北道の委託事業として、日本企業が参加する「就職フェア」を現地で開催予定だったが、学生が集まるか見通せず中止となった。

 今回のインターンシップ期間中、学生に「自分で考える」ことの大切さを訴えた。「自分で考えられない人材は企業も要らない」。日韓対立をあおる言説に流される人々の姿は、求められる人材像から程遠い。「いろんな考えがあって良い。でも考える軸は自分じゃなきゃ」

 現場の肌感覚では韓国側も、特に若い世代は日本との交流を望んでいる。「一人一人が自分で考えてつながる。そのための種を次世代にまく」。それが自分の仕事と心を決めている。(江藤俊哉)

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