基準地価 被災地の下落が示す課題

西日本新聞 オピニオン面

 地価は、その土地の需給バランスを反映している。自然災害の被災地には、人口が流出して需要が減り、地価下落が止まらない地域が少なくない。

 利便性が悪い土地や山間部で人が減るのは避けられない面もあるが、災害で地域社会や隣人との結び付きを根こそぎ失うのは事情が異なる。深刻な問題だと改めて確認したい。

 国土交通省が発表した7月1日時点の都道府県地価(基準地価)でも、被災地の地価下落が目立った。

 下落率が最大だったのは、2018年7月の西日本豪雨で堤防が決壊し、広域にわたり最高5メートル超水没した岡山県倉敷市真備町だった。住宅地、商業地とも15%を超す大幅下落を記録した。その次が西日本豪雨の被害が大きかった広島県三原市で、10%超の下落だった。下落幅の大きさは、被害の大きさと復旧・復興に時間がかかっている現状を投影している。

 地価の動きは、地域経済の「元気度」を示すバロメーターでもある。その動きが九州の被災地では二極化している。

 16年4月の熊本地震で最大震度7を記録した熊本県益城町は復旧・復興需要で被災2年目に地価が反転した。熊本市周辺の他の被災地も同様の傾向で、地価の回復基調が続いている。一方、熊本県内でも阿蘇市や南阿蘇村は道路や鉄道が寸断されたままで、下落に歯止めがかからない。

 17年7月の九州豪雨で被害が大きかった福岡県の朝倉市や東峰村でも被災地の地価下落が止まらない。倒壊住宅の移転先として朝倉市の一部で地価が上がっている半面、道路や鉄道の復旧が遅れている被災地や山あいの地域では下落が続く。

 被災をきっかけに住民が土地を離れるケースもある。住民が減れば地域の疲弊を誘発し、地価が被災前の水準に戻るのは難しくなる。地域の疲弊がさらに住民の減少を招くという悪循環に陥りかねない。道路や鉄道などの不通が続けば、こうした動きを止めるのは難しい。暮らしを支えるインフラの早期復旧が被災地復興のカギを握る-との認識を関係者は共有すべきだ。

 災害は弱者を一段と弱い立場へ追い込む、過酷な顔を持つ。過疎地や高齢化が深刻な自治体こそ、災害への備えを徹底しなければならないが、そうした自治体ほど財政力やマンパワーに限界がある。国の支援や自治体間の連携が欠かせない。

 台風15号で大規模停電が続いた千葉県では初動の遅れが指摘されている。自然災害はいつ、どこを襲うか分からない。防災意識を高め、国を挙げて災害への備えを万全に整えたい。

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