油流出、30年前の対策 実らず 佐賀鉄工所大町工場 対応を行政と協議

西日本新聞 佐賀版 梅本 邦明

 8月下旬の記録的大雨では、大町町の佐賀鉄工所大町工場から流れ出た油が大きな被害を招いた。大雨から3週間以上たっても民家に付着した油は完全には除去できず、被災者の暮らしは平穏からはほど遠い。約30年前にも大雨で油が流出し、建物をかさ上げするなどの対策を取っていた同社。想定を超えた今回の大雨に、さらに対策を強化して、補償を含めた対応を町と協議している。大雨当時の状況を含めて検証した。

 「今も雨が降ると家の庭に油がにじみ出る。柱や床に付いた油は洗剤を使ってもかなか落ちない」。工場の南東、約1キロ離れた自宅が油被害に遭った男性(83)は肩を落とす。

 大町工場は車と農機具用のボルトを製造。油槽があるのはボルトの強度を高める熱処理工場(広さ約5千平方メートル)で、24時間体制で稼働。8基の熱処理炉にそれぞれ深さ約3メートルの油槽が地中にあり、「焼入(やきいれ)炉」を通ったボルトはベルトコンベヤーで油槽に運ばれて冷却。さらに「焼戻(やきもどし)炉」に運ばれて再び焼かれる。どの油槽にも密閉用のふたはないという。

 大雨当日の8月28日、雨が激しくなったため同社は午前3時ごろ、油槽へのボルトの投入を止めた。浸水を防ぐため工場北側に土のうを積み、流出の可能性に備えてオイルフェンスを設置。その後、熱処理の全工程を止めたが、同5時ごろから油槽に水が入り、押し出された油が漏れて同6時半ごろに敷地外への流出が確認された。

 工場では1990年7月にも油が流れ出た。このため熱処理工場の3カ所の搬出入口にあったビニール製のシャッターを鉄製に変えて強化し、建物を数十センチかさ上げした。それでも今回は熱処理工場の内側が約40センチ、外側は約70センチも水に漬かった。同社は「30年前に講じた対策の能力を超え想定外の大雨だった。水かさが増す勢いがすごかった」と説明する。

 県と町によると、油被害を受けた水田の面積は約26ヘクタール。民家約100棟が油混じりの水に漬かった。住民からは「油や汚水の臭いが残り眠れない」「どこが家を補償してくれるのか」との不満が聞こえる。

 同社は再発防止策として、油槽などを囲む形で熱処理工場内に高さ約90センチの鉄柵を設置。さらに大町工場の東側と南側に総延長約600メートルの常設オイルフェンスを取り付けた。

 杵藤地区広域市町村圏組合消防本部は防止策を踏まえ、同社に出していた熱処理工場の使用停止命令を今月6日に解除した。同消防本部は工場内に流出した油の量は11万3110リットルと発表。だが、県が約5万リットルと推定していた敷地外への流出量は「不明」とした。

 操業を止めていた熱処理炉のうち、2基は16日に再稼働。10月中旬までに全てが再稼働する見込みという。一方、被災者の暮らしの再建はこれからだ。同社の広報担当者は「行政の指導を仰ぎ、一日も早く町民の生活が再建できるように真摯(しんし)に対応していく」と話した。(梅本邦明)

 

みなし仮設など24日から受け付け 大町など7市町

 8月の記録的な大雨で冠水被害を受けた武雄市や大町町など7市町は24日から、災害救助法に基づき、民間物件を借り上げて家賃を公費負担する「みなし仮設住宅」と、応急修理制度の受け付けを始める。

 県によると、みなし仮設は世帯人数に応じて家賃を最大8万円まで最長2年間、公費で賄う仕組み。家屋の全壊が原則だが、大町町では鉄工所の油で被災した住宅に限って弾力的に運用。「日常生活を営むことが困難」と判断した場合に入居を認める。

 応急修理制度は半壊以上を対象に、58万4千円を上限に修理費用を公費で負担する。どちらも罹災(りさい)証明書の提示が必須となる。

 各市町の窓口は次の通り。佐賀市建築住宅課=0952(40)7291▽多久市建設課=0952(75)4826▽武雄市復興対策室=0954(27)7510▽小城市定住推進課=0952(37)6150▽大町町農林建設課=0952(82)3151▽江北町建設課=0952(86)5618▽白石町建設課=0952(84)7124。

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