医療機器開発に現場の声 飯塚病院 「でべそ」治療製品や腰サポートウェア

西日本新聞 筑豊版 中川 次郎

飯塚病院のイノベーション推進本部の工房・知財管理室。増本陽秀院長(中央)を本部長に井桁洋貴さん(左)らが商品開発を手掛ける 拡大

飯塚病院のイノベーション推進本部の工房・知財管理室。増本陽秀院長(中央)を本部長に井桁洋貴さん(左)らが商品開発を手掛ける

へそ圧迫材を持つ中村晶俊医師

 飯塚病院(飯塚市)にイノベーション推進本部と呼ばれる部署がある。医療現場での問題点やスタッフのアイデアを一元管理し、それを基に医療、福祉の機器や器具を、民間企業と共同開発する。現場の声を生かした医工連携。全国でも珍しい取り組みを探った。

 同病院教育研修棟の3階に同本部の工房・知財管理室がある。スタッフはマネージャーの井桁洋貴さん(47)を含め計3人。井桁さんは「医師や看護師などからの情報がここに集まる。患者の役に立つ製品づくりを進めている」と話す。

 開設は2012年4月。病院スタッフはさまざまな課題を持ち、不便さを感じることもある。ただ、個人では解決できないケースもあるため、現場のニーズを収集する仕組みを構築した。

 院内の全パソコンに「ニーズ・アイデア投稿サイト」があり、現場の要望や意見が同本部に寄せられる。製品化の可能性があるアイデアの場合、スタッフはヒアリングやニーズ把握、製品調査を重ね、共同開発する業者を探し、知財出願や臨床評価をした上で販売する。

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 その一つが、でべその原因になる臍(さい)ヘルニアの早期治療製品「乳児用へそ圧迫材パック」だ。メディカルメーカー「ニチバン」(東京)と共同開発し、昨年6月から同病院の介護用品ショップなどで販売している。

 臍ヘルニアは、生まれてすぐの乳児の腸などが筋肉の隙間からはみ出し、へそが膨張した状態。筋肉が発達してくる1歳頃までに自然に治ることが多いが、へその皮膚が緩んで飛び出したままの「でべそ」となることもあるという。

 小児外科部長の中村晶俊医師(49)によると、従来は膨張した部分を、丸状の綿で押さえてテープで固定する方法が一般的だったが、家庭ではへその押さえ方が難しかったり、乳児が泣くために処置に時間がかかったりしたという。

 そこで、中村医師は綿球に変わる方法を同本部に相談。井桁さんが、医療用テープの製造を手掛けるニチバンに協力を呼び掛けた。製品は、やわらかくつぶれないポリウレタン発泡体のへそ圧迫材、皮膚に優しい固定テープ、その上から貼って固定力を高める補強テープからなる。ドラッグストアでは販売していない。

 中村医師は「綿球での圧迫よりもへその膨らみが改善する期間が短く、形もきれいに治る。おへその飛び出しに気付いたら、早期相談と早期治療を勧めたい」と話す。

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 他に開発したのは、採血業務指標化システム。血管の状態や採血部位など患者のデータを集めることで、個人の採血の難易度を把握する。採血が難しい患者の場合は、採血にたけた検査技師が担当するなど、安全性の向上を図っている。

 看護師らが患者の身の回りの世話や治療の補助をする際、腰の負担軽減を図るサポートインナーウェアも製品化。同病院で100人以上が活用している。

 現在、約20の開発を手掛けており、実用化に向け作業を進めている。同本部の本部長を務める増本陽秀院長は「飯塚病院は、医療の質の向上を目標としている。新しい製品を生み出し、医療に貢献していきたい」と話した。 (中川次郎)

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