観光立国 持続可能なオモテナシを

西日本新聞 オピニオン面

 日本と韓国の関係が冷え込む中で、8月の韓国からの訪日客が30万8千人(前年同月比48%減)に落ち込んだことが観光庁の推計で分かった。九州をはじめとした地域経済への打撃は大きく、日韓対立の悪影響が顕在化したかたちだ。

 しかし、冷静な受け止めも必要だ。訪日客全体では、今年1~8月の客数は2214万人(前年同期比3・9%増)と過去最高ペースで推移し、韓国以外からの訪日ラッシュは続いている。アジアでは中国やベトナムなど、欧米では米国やカナダなどからの来客が前年比10%以上の伸びを見せている。

 そこで提起したいのは、この流れを持続させるため、長期的な視点で受け入れ態勢を地道に整えていく取り組みだ。

 観光立国を目指す日本で今、こんな現象が広がりつつある。オーバーツーリズム(観光公害)-。旅行者が増え過ぎて交通混雑などが日常化し、地域の生活環境が悪化する状況を指す。

 具体例としては「地域住民が路線バスに乗れない」(京都)「電車の大混雑や車の渋滞が頻発する」(神奈川県鎌倉市)といった問題が生じている。旅行者によるごみのポイ捨て、トイレの汚損、私有地への立ち入りなどに悩む地域も増えている。

 共同通信が今夏、全国の自治体に実施したアンケートでは、九州を含む93市区町村でこうした問題が「起きている」、465市区町村で「今後起きる懸念がある」との回答があった。

 京都では旅行者を「朝観光」「夜観光」に誘導して日中の混雑を緩和する作戦、鎌倉では住民を鉄道駅に優先入場させる社会実験などが行われている。それでも対応には限界があり、抜本策として、旅行者を地方各地に誘導、分散させる取り組みの必要性が指摘されている。

 地方では、予算や人手が足りず、多言語対応や災害時の避難誘導に不安を抱える自治体も多い。それを踏まえ、分散に当たっては広域連携や官民連携の輪を広げることも課題とされる。

 欧州では、オーバーツーリズムが社会問題化し、「反観光」デモが起きた例もある。訪日客を2020年に4千万人、30年に6千万人まで増やす政府目標を達成するには、海外の教訓を見据える必要もあろう。

 一方、九州では欧米客の誘致促進が課題だ。現状ではアジアからの来客が9割余を占め、日韓の対立や中国からのクルーズ船の減少がもろに地域経済を揺さぶっている。一朝一夕での打開は難しいが、欧米から多数の観戦客が見込まれるラグビーのワールドカップでも九州の魅力をアピールするなど、新たな戦略を模索していきたい。

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