PTAを考える(3)組織的対応 1校だけでは限界

西日本新聞 くらし面 前田 英男

 自由な入退会などPTA改革を巡り、九州は遅れが指摘されている。役員らに意識はあるが、伝統や地域のニーズもあって踏み切れないケースも目立つ。そうした中、福岡市内の小中学校、特別支援学校PTAでつくる福岡市PTA協議会(市P協)が現状の課題を洗い直す取り組みを進めている。変革の波に組織として対応する試みだ。

市ぐるみで課題洗い直し

 今年2月、福岡市役所であったPTA会長・担当副会長合同研修会。メインの研修テーマに入ると役割分担した数人が立ち上がり、シナリオを読み上げた。

 「最近、PTAの任意加入問題ってよく言われるけど、それって何?」

 「PTAは任意団体だから、入るのもやめるのも任意、自由ってことだよ」

 「えっ、全員入るものだと思っていた。じゃあ、入らなくてもいいの?」

 シナリオは市P協が今年作製し、加盟する全ての学校に配布した漫画冊子「PTAって何?」。役員歴1~8年の男女が会話形式で入退会問題を分かりやすく解説している。

 PTAはボーイスカウトやスポーツクラブなどと同じように入りたい人が入る組織である▽入りたくない人に非入会届の提出を求めるやり方もあるが、入会申込書を集めることで会員の連絡先が得られるメリットがある▽PTA活動は全ての子どものためという公益性があるため学校施設の一部使用が認められ、非会員家庭への不利益はNG-といったルールが続く。

 その上で、任意性を周知した結果PTAに入らない人が増えることで活動の縮小や解散した例も紹介。子どもたちが楽しみにするイベントなどを減らさないためにも、これまでのやり方を見直し、参加したくなるような在り方を提案している。

参加したくなるPTAへ

 「もちろん時代の要請もあるが単位PTAだけでの対応には限界もある。市内のPTAを取りまとめる組織として指針の必要性を感じた」。中心になって冊子をまとめた市P協課題対策特別委員会元委員長の木村貴さんはそう話した。

 市P協は、熊本市で訴訟が起きるなど入退会の問題が浮き彫りになる中、2年前に特別委を設置し実態調査に着手。2017年の加盟校アンケートで15年度以降、退会や入会拒否の申し出を受けたケースを尋ねたところ、約3割に当たる75校が「あった」とした。

 申し出の理由は、仕事などのために活動できないことが最も多く、活動方針や委員決めの方法に賛同できないとの回答も3割近くに上った。校長や役員らによる説得などがあり、最終的な非会員は20件だった。

 一方、18年度に小学校39校、中学校22校が入会の任意性について新入生や在校生の保護者に説明していなかったことも分かった。結果を受けて特別委は昨年8月、入退会問題の背景やリスクなどを説明しつつ入会申込書などを例示したガイドラインを作った。漫画冊子はそのコンパクト版だ。

 特別委メンバーは昨年から今年にかけて、各地で説明会を実施。参加した会長の一人は「改革を一気に進めるのは難しいが、全体の方向性が示されたことは励みになる」と話した。任意性を説明しない学校は本年度、大幅に減った。

当事者意識持って考える時

 特別委によると、近年、入会申込書を集め始めた複数の小学校では会員の減少率が2~20%と大きく開いた。「それぞれに地域事情ややり方はある。指針を参考にしつつも、保護者への丁寧な説明と理解が何より求められる」と木村さん。PTAの存在意義も含め、改革に向けてどんな議論が必要か。全ての保護者が当事者意識を持って考える時期にある。(前田英男)

課題への対応 4段階で評価…大津市では

 独立した団体であるPTAに対して、各自治体の教育委員会は積極的な介入を避ける傾向にあったが、さまざまな問題の高まりを受けて近年は加入時の説明など一歩踏み込んだ対応を見せるようになっている。

 全国のPTA関係者の注目を集めているのが、大津市教委が2018年、市内の公立小中学校長、幼稚園長向けに配布した「PTA運営の手引き」だ。

 強制加入、役員選出、事業・事務見直し、個人情報の扱い、会費徴収、会費の使途、その他(未加入者への教育的配慮や必要性の説明)の七つの課題を取り上げて対応策を例示。理想とされる「レベル2」から改善が必要な「レベル0」の3段階で表し、一部は違法性を問われかねず早急な対応が必要という「レベルマイナス」を加えた。

 例えば強制加入では、加入の任意性を説明していない場合、最低のマイナス評価。入会届を取得していれば最高のレベル2となる。

 同時に示された改善方針には、教師が会員として関与するなどしており、コンプライアンス上のリスクの把握と適切な対応の必要性を強調。各学校園での改革を訴え、教委は「最大限の支援」を約束している。

 九州では、大分県杵築市教委が入会と個人情報の意思確認の必要性について14年に、熊本市教委が保護者の加入の有無にかかわらず児童生徒の平等な対応を求める通知を18年に、それぞれ学校長らに出している。

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