丹東(中国) 緊張感混じる国境観光

西日本新聞 夕刊 岩佐 遼介

チマチョゴリを着て記念撮影する観光客たち。対岸は北朝鮮 拡大

チマチョゴリを着て記念撮影する観光客たち。対岸は北朝鮮

鴨緑江の遊覧船には北朝鮮側を眺めるための双眼鏡が置かれていた 鴨緑江の北朝鮮側には煙突が見えた 北朝鮮籍船が行き交う鴨緑江 虎山長城から眺める北朝鮮。水色の建物は北朝鮮兵の監視小屋だという 川幅が数㍍に拡張された「一歩跨」 鴨緑江の中国側には高層ビルが立ち並ぶ 万里の長城の東端を復元した「虎山長城」 地図・丹東

 北九州市を旅立ち、中国・大連市経由で北朝鮮との国境にある丹東市を目指した。

 大連から丹東への移動手段は高速鉄道。中国の主要都市をつないでおり、総営業距離は新幹線の約10倍の約3万キロに近いという。中国人でさえ身分証を提示してセキュリティーチェックを受ける必要があり、空港かと錯覚するほど巨大な駅の入場ゲートには長蛇の列ができていた。乗ってみると、進行方向が座席の向きと逆なのが気になったが、乗り心地は快適。大連から丹東まで300キロ余りを約2時間で結んだ。

 丹東駅からバスに乗り、5分ほどで北朝鮮と中国を隔てる鴨緑江に到着した。川幅は約400メートル。川沿いの遊歩道には、民族衣装のチマ・チョゴリを試着する露店などが立ち並び、北朝鮮側を背にセルフィー(自撮り)に興じる観光客でごった返していた。

 対岸の北朝鮮を近くで眺めることができる遊覧船に乗船すると、双眼鏡が山積みされている。閉ざされた国のイメージが強い北朝鮮。眺めること自体が人気で、私も自然と双眼鏡に手が伸びた。

 船上から両岸を眺めると、丹東側には高層ビルが立ち並ぶ。一方の北朝鮮側には、建物がまばらに立っているだけだ。

 「あれは労働者を運ぶ運搬船です」。現地ガイドが指す船には多くの男女が乗り込んでいた。近くを通過した北朝鮮籍船に誰かが「アニョハセヨー(こんにちは)」と手を振って叫ぶと、向こう側の男性がにこやかに手を振り返した。経済制裁発動後も人や生活物資の往来は盛んで、北朝鮮は身近な存在だという。現地ガイドは「よく酒を酌み交わす朝鮮の友人がいるよ」と話していた。

 続いて、鴨緑江沿いをバスで走り、北朝鮮に最も近づくことができる観光スポットに向かった。川沿いのフェンスには、有刺鉄線が張り巡らされている。ほのぼのした遊覧船での光景に気が抜けていたが、改めて国境の街に来たことを思い出す。

 到着したのは、万里の長城の東端を復元した「虎山長城」。長城から北朝鮮側を見渡すと、集落だろうか、オレンジ色の屋根が並ぶ一角や畑が見える。水色の建物は軍人の監視小屋だという。小屋の窓から銃を持った軍人がこちらを伺っている様子が頭に浮かぶ。

 近くには国境の「一歩跨(いっぽまたぎ)」がある。川幅はかつて40センチほどで、簡単にまたげたことから、この名前が付いたという。約3年前、中国と北朝鮮が協議の上で工事を実施し、川幅を拡張。現在は数メートルあり、残念ながら1歩でまたぐことはできない。

 鴨緑江沿いと同様、近くには観光客向けの土産店などが立ち並ぶ。カメラを構えて撮影していると、突然現れた中国の軍人が現地ガイドに何やら詰め寄っている。自分たち軍人を撮影しないよう注意をしただけだったようだが、やはり国境の街。時折、緊張を感じる旅となった。
 (岩佐遼介)

 ●メモ
 人口約240万人の丹東市へは、大連市まで航空機で行き、高速鉄道を利用するのが便利だ。高速鉄道は、1等席約2600円、2等席約1600円。中国と北朝鮮を結ぶ「中朝友誼(ゆうぎ)橋」には道路と線路が通っており、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が特別列車で通過することもある。

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