台風で広域停電 命を守る「無電柱化」急げ

西日本新聞 オピニオン面

 台風17号は九州を暴風域に巻き込んだ後、きのう温帯低気圧に変わったが、日本列島各地に風水害の脅威をまざまざと見せつけた。

 負傷者が多数出たほか、飛行機の欠航や列車の運休などが相次ぎ、3連休の市民生活は大きく乱れた。

 九州で特筆すべきは、最大時で14万戸以上が電柱の損傷などにより停電に陥ったことだ。暗闇の中で建物を揺らすほどの風雨に、より一層の恐怖を覚えた人も多かったのではないか。

 先の台風15号では千葉県で大規模停電が起き、長期化している。断水に加えエアコンが使えず熱中症で亡くなったり、入院患者が転院を強いられたりする過酷な事例が報告されている。

 携帯電話が充電できず、家族や職場との連絡もままならない状態が続いた。生活インフラの多くを電力に依存する社会の弱さを、あらためて浮き彫りにしているとも言えるだろう。

 今後も、地球温暖化に伴って風水害の増大と夏場の高温化は進む可能性があるとされる。そんな状況下での大規模停電は、深刻な二次災害である。

 抜本対策の一つは、電柱を地上からなくして電線を地中化する「無電柱化」だ。千葉県では約2千本の電柱が倒壊や破損したと推定されている。

 日本は終戦後、復興を優先して、安価で早く工事が済む電柱を整備してきた。

 災害時に倒れた電柱は大規模な停電のほか、復旧の妨げになる。2011年の東日本大震災で約5万6千本の電柱が倒壊した教訓などから、無電柱化推進法が16年に施行された。

 国内には3500万本以上の電柱があり、道路新設に伴って年間約7万本ずつ増えている。無電柱化の達成率は先進国のパリやロンドンで100%なのに対し、日本は東京23区でも約8%にすぎない。九州7県はいずれも1%前後だ。政令市でも福岡市が約3%、北九州、熊本両市は約2%にとどまる。

 一番の原因が高コストだ。道路1キロ当たり約5億円が必要とのデータもある。国土交通省は民間企業とも協力し、工法の工夫でコストを最大7割削減する実験を続けている。低コスト化に向け、官民ともあらゆる努力を尽くしてほしい。

 電柱が地中化すれば変圧器を歩道に置かねばならず、周辺住民の理解も欠かせない。各自治体内で、その狙いや効果について共通認識を深めてゆきたい。

 防災に限らない総合対策としては、電話線やガス管、水道まで道路地下に収容する共同溝が望ましい。費用が膨大で関係機関の調整も難しいが、中長期的に取り組む課題である。

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