【きょうのテーマ】1冊の本ができるまで 出版社「海鳥社」(福岡市)を訪問 取材、編集、校正…2年がかり

西日本新聞 こども面

 ●営業担当が書店回り 売り込み

 「大好きな本がどうやって作られているか知りたい」。そんな思いを持つこども特派員たちが、福岡市博多区の出版社「海鳥社」を取材しました。

 会社に入ると大きな本棚がいくつも並び、机には倒れそうになるほど何冊もの本が積まれていた。編集部長の田島卓さん(44)が編集者の仕事を説明した。

 「これは私が編集を担当した本です」。7月に発売した「九州の島めぐり 58の空と海」(吉村靖徳著)を見せてくれた。出版社の依頼で著者が島々を取材し、原稿を書き上げるまでに1年半。田島さんが編集作業をし、約2年かけて完成したそうだ。

 「原稿が届いたら、著者と話し合いながらレイアウトやタイトルを決め、校正を重ねる」と田島さん。レイアウトとは文章や写真の配置、校正は文字や文章の誤りを正すこと。本のページをばらばらにしたような、校正紙と呼ばれる試し刷りも見せてくれた。

【紙面PDF】きょうのテーマ=1冊の本ができるまで

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 校正紙にはあちこちに手書きのメモが書いてあった。田島さんが「手紙みたいに著者とやりとりする」という校正のあとだ。こども記者も校正を体験した。

 文章を読んでみると、「大好ききです」と書かれているが、「き」が一字多い。「建物を立てる計画」とあるが、漢字は「立てる」ではなく「建てる」では? 「最初は、でも、」は「でも」から書き始めた方が読みやすい。

 たった1枚の校正紙だったが、見落とした誤りもあり、大変な作業だと実感した。

 普通3回行う校正では、地図の色や線の太さ、文字の大きさも見る。田島さんは「本はずっと残り、多くの人が読む。間違いがないこと、人を傷つける内容にならないことに気をつけている」と話す。

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 校正を終え、別の会社で印刷と製本をした本は再び出版社に戻ってくる。注文が入ると、全国の出版社の本を扱う取り次ぎ会社に本を送り、書店に届けられる。より多くの人に読んでもらうため、九州中の書店を回って売り込むのが営業部長の髙着朗さん(57)だ。

 髙着さんと市内で開かれていた「こどもの本ブックフェア」を訪れた。地元の出版社コーナーには「九州の島めぐり」のポスターが貼ってあった。髙着さんは「読者に関心を向けてもらうため本の並べ方も工夫する。書店の人には『九州に限定した島の本は多くない。売れますよ』とアピールする」と話す。本に関わる人々の思いにふれ、ますます本が好きになった。

 ●「本の魅力、体で感じて」 編集部長 田島さん

 若い人が本を読まなくなる「本離れ」が進んでいる。しかし本を買ってもらわないと、出版社や書店は経営が難しくなる。取材に参加した吉井南遙特派員が住む地域では3月に書店が一つ閉店し、「とても悲しかった」という。そこで、海鳥社編集部長の田島卓さんに本の良さを聞いてみた。

 田島さんは「本は目で読むだけじゃない」と話す。インキのにおい、手で持った時の感覚など体のいろんな部分で感じることができるという。さらに、本棚に並んでいる本の背表紙に手を触れ「ここにあるだけで、無意識でも読んだ時のことを思い返して吸収し、また理解していける」と楽しそうに語る。古里小珀特派員は「本の良さをこんな風に人にしっかりと伝えられるってすごい」と感じた。

 「若い人にももっと読んでもらえるように、良い本を作っていきたい」と田島さん。本好きのこども特派員たちも「本ができるまでの作業を動画にアップしてみては」「学校の出前授業で本の良さをPRしてほしい」などと思い思いのアイデアを出し合った。

 ●わキャッタ!メモ

 ▼海鳥社 1985年に設立された本を作る会社。九州の歴史や文化の本を中心に毎年約40冊を出版。編集者や営業担当者など7人が働いている。

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