空き家管理 代行サービス拡大 特措法での義務化受け 「ふるさと納税」返礼品にも

西日本新聞 くらし面 河野 賢治

壊れた網戸など、空き家になった住宅の破損状況を調べる江口良太さん 拡大

壊れた網戸など、空き家になった住宅の破損状況を調べる江口良太さん

 少子高齢化や核家族化で増える空き家を、所有者に代わって管理する民間サービスが広がっている。解消策である利活用や解体は、多額の費用負担や相続トラブルがあると進まず、当面の手段として利用されているようだ。管理不全の状態が続けば、倒壊や火災、衛生上のリスクが高まるため、自治体にはふるさと納税の返礼品に管理代行サービスを加える例も出ている。

 19日午前、福岡市にある空き家を同市シルバー人材センターの会員が訪れた。庭の雑草は大人の胸まで伸び、網戸は壊れている。「木も伸びたなあ。隣の家にはみ出てる」とセンター会員の江口良太さん(70)。

 この家の所有者は、転居したのを機にセンターの有料サービス「空き家・空き地見守り安心サポート」を利用。会員が月1回、家や庭の写真と破損状況を報告書にして郵送している。

 江口さんは玄関や窓の施錠、郵便物も確認。所有者が望めば、除草や清掃を別料金で引き受けるメニューもある。室内の管理は鍵が必要で、トラブルの恐れがあるため対象外という。

 サービスは2017年度に始まり、18年度は38件の利用があった。本年度はそれを上回る見通し。センター理事の波多江弘和さん(72)は「他の空き家も雑草や壊れ方はここと同じくらい。人がいないと、やっぱり荒れてしまう」と話す。

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 こうした空き家は全国で増えている。総務省の「住宅・土地統計調査」によると、18年10月現在の空き家数は846万戸で、前回調査の13年から26万戸増えた。住宅総数に占める割合も13・6%となり、過去最高になった。

 国は15年、空き家対策特別措置法を施行し、倒壊などの恐れがあると「特定空き家」に指定し、行政代執行で強制撤去できる仕組みを整えた。空き家になるのを防ぐ対策では、相続人が居住者のいなくなった住宅をリフォームしたり、解体して更地にしたりして売却すると、その利益から一定額を控除して所得税を軽減する特例措置も始めた。

 それでも、解体費が不足▽取り壊して更地にすると固定資産税が増える▽処分について共有者の意見が対立▽所有者が不明-などの理由で増加は止まらない。市町村が空き家情報を集約し、利活用したい人に紹介する空き家バンク制度もあるが、大幅な解消には至っていない。

 一方、特措法で所有者の管理が義務化されたこともあり、代行するサービスは広がっている。

 一般社団法人「大阪府不動産コンサルティング協会」(大阪市)は15年、いち早く空き家管理マニュアルを作成。これを基に、不動産業界も指針を作って会員企業に参入を促した。NPO法人やシルバー人材センターのサービスも目立つ。

 内容は事業者によってさまざま。建物の破損や庭木の状況を写真付きで報告するだけのメニューをはじめ、鍵を預かって室内の風通しや通水、清掃まで実施するものもある。

 同協会の米田淳会長は「利活用や解体などは相続手続きや所有者の特定、荷物の運び出しなどに時間がかかる。古い家なら台風などで壊れる恐れがあり、つなぎの意識で利用されているようだ」と見ている。

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 空き家はごみの不法投棄や不審者の侵入、放火などの恐れもある。リスクは個人の問題にとどまらないため、管理代行サービスをふるさと納税の返礼品にする自治体も出ている。

 ふるさと納税の仲介サイト「ふるさとチョイス」を運営する「トラストバンク」(東京)によると、返礼品としてサイトに掲載された空き家や空き地の管理代行サービスは約500件に上る。17年から18年にかけては新規登録が2倍以上に増えたといい、担当者は「自治体も危機感を持っているようだ」と分析する。

 では、空き家を放置すると、所有者にはどんな不利益があるのか。

 まず、市町村から特定空き家に指定され、改善を勧告されると敷地の固定資産税が増額となる。それでも対応せずに改善を命令されると過料の対象に。最後は行政側が代執行で強制撤去できるようになる。これ以前に、家や庭のブロック塀などが壊れ、他人に損害を与えると、所有者は民法上の賠償責任を負う。

 米田会長は「管理は誰でも、低価格で必要最小限にしたいのが本音。そう考えると、不動産業者などの専門業者が手厚いメニューを提供するだけでなく、シルバー人材センターや住民もノウハウを学んで簡易なサービスを提供するなど、担い手が増えるといい」と語る。(河野賢治)

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