偏食は、わがままじゃない 発達障害 感覚過敏や強いこだわり 特性を見定めて 安心できる関係を 

西日本新聞 くらし面 国崎 万智

福岡県太宰府市のすみれ園では子ども一人一人の偏食の傾向に配慮した給食を提供している 拡大

福岡県太宰府市のすみれ園では子ども一人一人の偏食の傾向に配慮した給食を提供している

 自閉症スペクトラム障害(ASD)など発達障害のある子どもは、限られた食べ物やお菓子しか食べないという極端な偏食を抱えることがある。感覚過敏やこだわりの強さといった障害の特徴が要因であることが多いが、「単なる好き嫌い」「わがまま」と誤った見方をされることも。障害がある子どもの食の困難に、どう向き合ったらいいのか。一人一人の特性に合った給食を提供する発達支援施設や、食事内容を配慮することで入所者の食の幅を広げている施設もある。

 福岡市南区の看護師、丹生(にぶ)暁子さん(46)の長男丈一朗さん(16)は広汎性発達障害があり、「ジャガイモと白身魚、チョコレートで育ったようなもの」(暁子さん)だった。平均体重にはほど遠く、極度の貧血で入院したこともあった。保育園の給食を拒み、家を出て帰るまでほとんど何も口にしなかった。暁子さんは「どうしたら食べてくれるのか分からず、不安で仕方なかった」と振り返る。

 神奈川県立こども医療センター(横浜市)の田上幸治医師によると、ASDの特徴の一つに味覚や嗅覚、視覚などの感覚過敏がある。酸味や辛み、苦みなどを異常に強く感じたり、食感や温度にこだわりを持ったりして受け付けないことがある。さらに、田上医師は「コミュニケーションが苦手なことも偏食の克服を難しくする。食べられる食品が15品以下の場合は、ビタミンやミネラルが極端に不足するなど栄養障害になりやすい」と話す。

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 精神、知的障害がある3~5歳児が通う児童発達支援センター「すみれ園」(福岡県太宰府市)は、給食の様子を観察して一人一人の偏食の傾向を把握する。調理法や盛り付けを工夫し、改善につなげている。

 カリカリの食感なら受け入れられる子には、トースターで硬めに焼く。食べられるかどうかを色で判断している場合は、拒否しない色の食べ物をメインに盛り付ける。食材の原形が分からず不安で食べられない子どもには、調理過程を見せる…。園では(1)色や形の視覚(2)温度、硬さなどの食感(3)集団の中か個別かという環境-といった偏食の要因となり得るパターンを見分け、メニューに反映している。

 給食内容に加え、苦手な物を食べ終えた後に好きな遊びを用意して良い見通しを示すなど、食べる意欲を引き出すためのコミュニケーションも重視する。フライドポテト以外は口にしなかった子が、卒園時には給食をほぼ完食できるようになったこともある。渡辺裕子園長は「食べる品数が少なくても、まずは食べられる物があること自体を認める。好きな物がある喜びと食べる楽しさを感じられる関わりをしたい」と、子ども目線を心掛ける。

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 極端な偏食は幼児期だけとは限らない。

 ごま塩おにぎりはごま抜きで。丼物は白米と具を別々に。とろみはNG-。重度の自閉症がある20~50代の人たちが生活する志摩学園(同県糸島市)では、入所者51人に対して食事のパターンは450通りを超える。栄養士や看護士らが集まる月に1回の給食委員会で、摂食状況の変化の気付きを共有し、個別の食事内容を見直す。受け入れられる食材は箸のひとつかみから徐々に量を増やし、レパートリーを広げる。

 総合管理者の末原浩之さん(56)によると、30年ほど前の設立当初は「偏食や食べ方を改善したい」との考えから、完食や三角食べ、早食い防止に取り組んでいた。利用者の中には食事の時間になると、パニックになったり給食をひっくり返したりする人もいた。強制せず、個人の特性を踏まえた給食に切り替えると、落ち着いて食事が取れるようになったという。根気を要する観察と見直しを積み上げるのは「一生続く食事こそ楽しいものであってほしい」と願うからだ。

 子どもの発達問題に詳しい「ほあしこどもクリニック」(東京都)の帆足暁子副院長は「一時的に無理に食べさせることに意味はなく、不安感からくるたくさんのこだわりを緩和し、本人にとって将来を生きやすくすることが一番の目的。『この人の薦めた物なら食べても大丈夫だろう』と安心できる関係を、時間をかけて作ることがスタートになる」としている。(国崎万智)

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【ワードBOX】自閉症スペクトラム

 自閉症の仲間の総称で、「広汎性発達障害」とも呼ばれる。言葉の発達の遅れ、対人関係の困難さ、こだわりの強さ、感覚過敏といった特徴がある。スペクトラムとは「集合体」のこと。自閉症の特徴を持ちながら、知的能力や言語の発達に遅れがみられない「アスペルガー症候群」も含まれる。発達障害には自閉症スペクトラムのほか、注意欠陥多動性障害(ADHD)や学習障害(LD)などがある。

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