病院の再編・統合、筑豊5施設 困惑の声 厚労省が検討対象公表 

西日本新聞 筑豊版 座親 伸吾 田中 早紀 丸田 みずほ 長 美咲 福田 直正

 医療体制の見直しを進めようと、厚生労働省は再編・統合の検討が必要と判断した公立・公的病院を公表した。県内で対象となった13病院のうち筑豊地区は5病院を占めた。厚労省は複数分野の診療実績などを基に判断を示したが、関係者からは「判断基準が分からない」「専門病院の立ち位置を大事にすべきだ」などと困惑の声が上がった。地域医療を支えてきた各病院のこれまでの歩みや反応をまとめた。

■総合せき損センター 専門的な立ち位置大事

 1979年開設の総合せき損センター(飯塚市)は、旧労働省内に立ち遅れる脊髄損傷患者の専門医療施設構想が浮上する中、車いすスポーツの普及に尽力した九州大名誉教授の故天児民和氏らが中心となり、誘致した医療施設。炭鉱の落盤事故で脊髄を損傷した患者がほかの地域に比べて多いという旧産炭地特有の事情もあったとされる。

 同センターの前田健院長代理は「専門機関なので、がんや脳卒中などの診療実績が無くて当たり前。極めて専門的な病院の立ち位置を大事にしてほしい」と指摘。「これまで通り脊髄損傷、脊椎疾患に対し最先端の治療を提供できる病院であり続けたい」と話した。

 大分県宇佐市から車で約2時間かけて通院している男性の妻(74)は、自身も腰椎分離症で入院した経験がある。「専門医がそろっていて安心感がある。全国でも2カ所しかない専門医療機関であり、この先も残ってほしい」と訴えた。 (丸田みずほ)

■済生会飯塚嘉穂病院 緩和ケアの特色は必要

 小高い丘の上に立つ済生会飯塚嘉穂病院(飯塚市)。結核患者が多かった筑豊の療養施設として1953年に発足し、県立嘉穂病院から2007年4月に済生会へ移譲された。

 医療費負担が困難な生活困窮者らへの支援に力を入れ「地域医療・癒やし・健康」を理念に掲げる。嘉飯桂地区を5ブロックに分けた地域包括ケアでは、飯塚市立病院や嘉麻赤十字病院などと医療・介護連携の軸を担ってきた。

 11年には筑豊地区で初めて、悪性腫瘍で治療が困難な患者を対象に痛みのコントロールや精神的ケアを目的とした緩和ケア病棟を開設した。母親が同棟に入院していた飯塚市の堀江貴実子さん(71)は「済生会の統合は100%困る。一緒になれば、特色も失われる。(再編・統合の検討が必要と)決めた人たちは地域の人たちの気持ちが分からないのではないか」と話した。 (座親伸吾)

■飯塚市立病院 黒字なのになぜ対象に

 「まさに寝耳に水だ」。厚労省の発表から一夜明けた27日、飯塚市立病院の関係者は、情報収集など対応に追われた。

 前身は、炭鉱のじん肺患者治療などを担ってきた筑豊労災病院(1959年開設)。同病院の廃止に伴い2008年、市が移譲を受け、指定管理者の地域医療振興協会が運営している。15年度以降の決算は黒字が続き、18年度は5270万円の黒字。外来患者数は、08年度は約8万8千人だったが、18年度には約12万5千人となった。別の関係者は「なぜ対象になったか分からない」と話す。

 片峯誠市長は「少子高齢化にともなう人口減少下では、現状の医療体制を見直すことは必要と考えている」とする一方、「医師不足による医療過疎の問題、在宅高齢者の医療、介護体制の構築において、市立病院など公的医療機関が果たすべき役割についても、合わせて考えていく必要がある」とコメントした。 (田中早紀)

■嘉麻赤十字病院 「地域の安心感」残して

 嘉麻赤十字病院(嘉麻市)は1938年の診療開始以来、日本赤十字社が運営に当たる。82年に現在の場所へ移転。2009年には閉校した山田高校跡地への新築移転に向けて市と協議を開始したが、17年に断念した。

 利用者の大半は合併前の旧山田市の住民。高齢化が進む同地域に密着したサービスとして、24時間対応の在宅医療・介護を展開。病院関係者は「公的病院として、個人病院ではカバーできないケアをしてきた」と胸を張る。

 通院している嘉麻市内の女性(74)は「統廃合されたら飯塚市まで行かねばならず、通院が面倒。バス代が余計にかかるため、経済的負担も大きい」と指摘。「地域に大きな病院があると安心できる。残してほしい」と訴える。同病院の柴田浩孝事務副部長は「県などと相談しながら今後のことを検討していきたい」とした。 (長美咲)

■川崎町立病院 周辺自治体からも患者

 1953年に国民健康保険直営病院として開設された川崎町立病院(同町)は2011年4月、町営から地方独立行政法人へと移行した。県内平均を大きく上回る高齢化率35・3%の同町にあって、内科や外科、眼科もある同病院は地域医療を支えている。隣接する添田町からも患者が訪れる。

 今回の再編・統合の検討対象とされたことに、近くの介護施設職員の女性は「施設利用者は、内科や眼科などは町立病院で診てもらっている。病院が遠くになるのは困る」といい、通院中の女性(87)も「年を取って何かと体の不調が増えた。病院が近くにあると頼りになる」と話した。

 伊森裕晃院長は「医療情勢の変化で機能分化や医療の効率化は必要と思われるが、今後も地域に必要とされる病院として、地域医療に貢献していきたい」とコメントした。 (福田直正)

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