最低賃金 東京と地方の格差是正を

西日本新聞 オピニオン面

 2019年度の都道府県別の最低賃金改定額が決まり、10月に順次、引き上げられる。

 全国加重平均の時給は前年度より27円高い901円で、4年連続で3%台の高い伸びとなった。政府は最低賃金の大幅アップをデフレ脱却対策の一つに据えており、早期の全国加重平均千円を目指す方針だ。方向としては間違っていないだろう。

 ただ、時給千円では1日8時間・週5日のフルタイムで働いても、年収はワーキングプア水準の200万円程度である。真面目に働いても、憲法が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」を営むことができる賃金とは言えないのではないか。

 ここはまず官民を挙げて、最低賃金の継続的な引き上げに取り組みたい。有効求人倍率は全都道府県で1を超え、人手不足の状態は明らかだ。その環境は整っていると考える。

 それと同時に力を入れるべきなのが、東京と地方の格差是正だと強調しておきたい。

 最低賃金は、パートやアルバイトなども含む全ての労働者に適用される。厚生労働省の審議会が、経済情勢などで都道府県をAからDまで4ランクに分けて引き上げの目安を示し、これを参考に都道府県の審議会で個別の引き上げ額を決める。

 19年度は19県で目安を1~3円上回る引き上げを決めた。この背景には、最賃が最も高い東京との格差に対する問題意識が高まったことがある。前年度に最賃が単独最下位となった鹿児島が、最も大きい29円の引き上げを決めたのはその象徴だ。

 その結果、東京と最賃が最も低い県の差は223円と1円だけ縮まった。だが03年度に103円だった差は2倍以上に広がっている。収入月額で3万7千円、1年で40万円以上になる。

 最低賃金が最も低い790円は福岡を除く九州6県など15県に及ぶ。この格差を放置したままでは、大都市への若者の流出を食い止めるのは難しい。外国人労働者が地方に定着しにくい大きな要因にもなっている。

 最低賃金の引き上げは消費を拡大し、地域経済の活性化にもつながるが、雇用する側にはマイナスもある。特に地方の中小企業や零細事業者の経営体力を奪う懸念は否定できない。

 競争力のない企業の退場はあり得るとしても、事業の縮小や廃業を過剰に招き、雇用が失われるような事態は避けねばならない。経営者には、最低賃金引き上げを生産性向上のテコとする覚悟と工夫を求めたい。

 一方、政府の中小・零細企業向け支援策は、設備投資を求めるなどの条件があり「使いにくい」と聞く。この際、要件緩和を検討してほしい。

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