「次の世代に引き継ぐ」 教訓は犠牲者の遺言 記者ノート 被災地のいま~福岡の小学生が岩手訪問(4)

西日本新聞 ふくおか都市圏版 上野 洋光

 この夏、福岡市南区の小学生10人が東日本大震災の被災地・岩手県大槌町を訪れ、その旅に同行した。震災直後に福岡からユニホームを贈った縁で、両地域のサッカーチームの交流試合が実現した。

 2011年3月、震災発生から約10日後、取材班の1人として同町に入った。町の中心部は津波で壊された民家のがれきがうずたかく積まれていた。まだ火災のにおいも残っていた。被災者も自分の家がどこに建っていたのか分からなくなるほど、壊滅的な被害が目前に広がっていた。

 あれから8年半。中心部は盛り土でかさ上げされた。県産木材を使った町営住宅、近代的なデザインの三陸鉄道の大槌駅もできた。高さ14メートルの防潮堤も海岸線に張り巡らされた。中心部には新しい商店や一戸建てが所々に建つ。

 前回訪問したのは3年前。この間、一気にインフラ整備が進み、街並みは新しくなった。だが、人けがなく、活気を感じられない。工事車両が頻繁に往来していた幹線道の通行量も少なくなった。

 青森県八戸市から宮城県仙台市まで、沿岸を走る三陸道の工事が来年度終わる。大槌町にも初めてインターチェンジができたが、「みんな素通りしていく。高速道が無料なので、買い物も町外。ここに残るのは高齢者ばかり」。中心部に新店舗を構えた仏具店店主(72)は嘆く。インフラ整備だけでは、復興は道半ばだと感じた。

    ◇    ◇ 

 人々の心も簡単に癒えるはずはない。今回、移動手段として車を貸してくれた40代の男性は震災で妻を亡くし、高校生や小学生の子ども3人とこの町で暮らす。町を出て行くことも、死ぬことも考えた。苦しみながら仕事と子育てを両立させ、気丈に振る舞う人々が被災地にはたくさんいる。

 1年半後には10年という節目を迎える。だが被災地の悲しみに終止符はない。それでも、残った人たちは犠牲者を弔い、働き、次世代を養い、町を盛り上げようと、それぞれが懸命だ。

 そんな被災地に、福岡の小学生10人はしっかりと向き合った。現地を訪れ、被災者に直接会って話を聞き、それぞれの思いを記した作文がその証しだ。同年代の少年たちと築いた絆も、今後の人生の大きな財産となるはずだ。

 あの震災を忘れずに、命が一つでも助かるように次世代に震災の教訓を伝える-。それが多くの犠牲者の「遺言」でもあり、被災地で暮らす人々のメッセージだとあらためて強く感じた同行取材だった。 

 (上野洋光が担当しました)

 =おわり

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