想定外にどう備える 佐賀大雨1カ月 住民の防災教育も必要

 県内を襲った8月末の記録的な大雨で広範囲に冠水被害が出た武雄市と大町町。六角川が水はけの悪い低平地を蛇行しながら流れ、水害の常襲地とされる。国や県などは排水機場や堤防の整備といった治水対策を進めてきたが、「想定外の雨量だった」(武雄市担当者)。大雨から1カ月。全国で豪雨災害が相次ぐ中、想定外にどう備えるかという難題が改めて浮かぶ。

 国交省武雄河川事務所によると、六角川流域は満潮時に海面より低くなる海抜ゼロメートルを含む低平地が広がり、排水もされにくい。このため農業用水路などがあふれる「内水氾濫」と河川が氾濫する「外水氾濫」が複合的に起きる全国的にも珍しい地形という。

 1980年と90年の大規模水害を受け、国などは用水路の水を六角川に流す排水機場や大雨時に川の水を農地に貯留する遊水池の整備、築堤などの治水事業を実施。こうした対策により、昨年7月は県内の4835戸が浸水した80年と同規模の雨が降ったものの、浸水被害は約97%も減った。

 だが、今年8月28日未明は武雄市や大町町など9市町で1時間に110~120ミリの猛烈な雨を記録。武雄市北方町にある六角川の水位計は観測史上最高の7・29メートルに達した。有明海の満潮も重なり内水氾濫が各地で発生、県内で約5700戸が床上・床下浸水した。

 佐賀大の大串浩一郎教授(河川工学)は「武雄市と大町町は北側の山と南側の六角川に挟まれ、水害に特に弱く、浸水被害が拡大した」と指摘する。

 想定外の雨によってハード、ソフト両面での課題が見えてきた。

 武雄市は28日午前6時半ごろ、武雄河川事務所から高橋排水機場(同市朝日町)が停止するとの連絡を受けたのに、防災無線などで地域住民に周知していなかった。市の担当者は「冠水によって登庁できない職員がいた上、救助要請も相次ぎ連絡できなかった」と陳謝した。

 排水機場そばに暮らす宮地好隆さん(65)は「排水機場が完成してからは大規模な冠水被害は減っていた。去年の大雨でも大丈夫だったので安心していた住民は多い」と語る。情報伝達のあり方と同時に住民側の意識を高める防災教育も欠かせない。

 六角川では同市東川登町に調整池を整備する計画が本年度、着工する。過去の水害では度々決壊していた六角川水系の牛津川では90万立方メートルを貯留する遊水池(多久市南多久町)が整備され、今回は結果的に決壊に至らず、武雄河川事務所は「一定の減災効果があった」とする。調整池は遊水池の5倍の貯水量で減災効果が期待される。

 ただ、調整池は過去何度も被害が起きた市街地よりも上流部に位置する。武雄、大町の浸水は海への排水が困難なことが一因であることから、大串教授は「今回、六角川上流部は平野部ほど雨が降っておらず、同じケースが起き時に効果があるか疑問だ」と指摘している。(金子晋輔)

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