逆転トライ呼んだ中村亮土、父子の夢結実 苦難乗り越え、泥くさく成長

西日本スポーツ

 ◆ラグビーワールドカップ(W杯)1次リーグA組 日本19-12アイルランド(28日・静岡スタジアム)

 たくましく成長した鹿児島実高出身のCTB中村がV候補撃破に導いた。防御担当のリーダーとして2試合連続で先発。アイルランドのアタックを次々と仕留めた。攻撃でもその突破力を発揮。後半18分にはマイボールスクラムからパスを受けた中村が前へ。最後に途中出場のWTB福岡が逆転トライを奪い、勝利の流れをつくった。

 原点は、未経験ながらラグビーを愛する父親・信也さん(62)がサッカー少年から楕円(だえん)の道へと導いた父子の絆にある。信也さんは鹿児島・財部高時代に県大会で優勝経験もあるハンドボール選手だ。専門学校に通うため上京。当時大学ラグビーが人気で、観戦した大観衆の早明戦に感動し、「結婚して男の子が生まれたらラグビーをさせる」と決めた。

 結婚後、長女、次女に続き3人目が男の子。体重3200グラムながら、太ももの大きさに目を見張った。妻の章子さん(61)に「ラグビーにうってつけの子を産んでくれてありがとう」と大喜び。「ラグビーは土にまみれ、泥くさく生きないと」と「亮土」と名付けた。

 だが5歳から始めたのは人気のサッカー。信也さんはラグビー観戦に連れて行ったり、日本代表選手が活躍したテレビ番組を見せたりとラグビーに触れる機会をつくった。中学3年の夏休みにサッカー部を引退。翌週、信也さんは「迷う時間を与えたくなかった」と鹿児島実高ラグビー部の見学へ連れ出した。中村はサッカー仕込みのキック力を披露。当時コーチの富田昌浩監督に「日本代表になれる」と絶賛され、やる気になった。翌日から練習に自主参加。高校入学後、信也さんは仕事帰りに練習を見学し、試合も欠かさず観戦。休日には台風の日でも一緒に走り込んだ。「(巨人の星の)星一徹みたいとよく言われた」と笑う。

 負けず嫌いの中村も努力を重ねて1年生から主力に成長。全国大会も経験したが、順風満帆ではない。2年時は故障で出場できず、3年時は初戦敗退。後半ロスタイムに決めれば逆転勝ちしたキックを外した。「花園」には苦い記憶しかない。

 帝京大では「入学当初は一番下手だった」と周囲のレベルに圧倒されながらも、はい上がり、主将として大学選手権5連覇をけん引。強豪サントリーではハイレベルな争いの中で定位置獲得に時間がかかった。日本代表でも前回W杯は途中選考で落選。今回も代表候補定着は昨秋からだ。信也さんは「代表なんて考えてもいなかった。感無量です」と目を細めた。

 中村には今、確信がある。「ずぬけた能力がなくても地道にやれば実を結ぶ」。世界ランキング2位を倒してつかんだ勝利。8強へと続く道を明るく照らしている。 (大窪正一)

鹿児島県の天気予報

PR

PR

注目のテーマ