デモ激化、怒れる香港 中国式統治に限界も 抗議活動への強制排除続く

西日本新聞 国際面 川原田 健雄

 ビルが立ち並ぶ香港の繁華街コーズウェイベイ(銅鑼湾)。蒸し暑さが残る29日午後、黒いTシャツ姿の数万人が「香港人、頑張れ!」と気勢を上げた。香港では「逃亡犯条例」改正案を発端にした抗議活動が4カ月近く続く。この日のテーマは「反全体主義」。中国を念頭に世界各地でデモが呼び掛けられた。

 デモ隊から突然「黒社会(ヤクザ)だ」と声が上がった。抗議活動を強硬手段で排除しようとする警察をやゆする言葉だ。警官隊に中指を立てて挑発するデモ参加者。デモ隊の1人が取り押さえられたのを機に衝突が始まった。警官たちが怒声を上げて無差別に催涙スプレーをまき散らし、抗議するデモ隊の一群に向けて催涙弾を撃ち込んだ。

 「むちゃくちゃだよ。警告なしにこんな乱暴をするなんて」。建築業を営む廖さん(60)が憤った。「香港が中国みたいになるのは絶対許せない。やっとの思いで逃げて来たんだから」

 廖さんは中国広東省出身。9歳のころ、毛沢東が主導した政治運動「文化大革命」で、「反革命分子」のレッテルを貼られた大人がリンチされる姿を何度も目の当たりにした。暮らしは貧しく、満足に食事もできない。「中国には豊かさも法律もモラルもない」。17歳の時、兄と2人で故郷を離れ、雑草を食べて空腹をしのぎながら4日かけて香港に歩いて渡った。

 中国の恣意(しい)的な司法の実態を知るだけに、香港から中国本土への容疑者引き渡しを可能とする「逃亡犯条例」改正や、警察の暴力には「絶対反対」だ。「香港を共産党のやりたい放題にさせちゃいけない。香港市民は皆、同じ思いだ」

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 「独裁国家と対峙(たいじ)するには世界的な連帯が欠かせない」。怒声が飛び交う銅鑼湾の街角で王さん(31)は訴えた。幼い頃、オーストラリアに移住したが、故郷の香港で繰り返されるデモに参加しようと2日前、飛行機に飛び乗った。

 中国と経済的なつながりを深めるオーストラリアでも「近年は経済、軍事両面で影響力を拡大する中国への警戒感が高まっている」と王さん。普通選挙などを求める香港人の訴えにも共感が広がっているという。

 香港の民主派は元学生リーダーの黄之鋒氏(22)らが米国やドイツを相次ぎ訪問して支援を求めるなど国際社会を巻き込み、中国に圧力をかける戦略だ。この日のデモも海外在住の香港出身者らが呼び掛け、世界24カ国、70を超える都市で開催が予定される。「(民主化を求める)香港の光はとても小さかったが、今では世界中に広がっている」と王さんは話した。

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 中国は10月1日の建国70年の記念式典を目前に控え、国際世論を少しでも自国に好意的に変えようと躍起だ。27日に発表した外交戦略に関する白書では、香港問題などを巡り、対中強硬姿勢を強める米国を念頭に「公然と他国の内政に干渉している」と批判した。

 「中国は米国の反応と、香港人の抵抗度合いを見て今後の対応を判断するつもりだ」と香港の政治評論家、劉鋭紹氏(65)はみる。ポイントとなるのは70年の節目が過ぎた後だ。「1989年の天安門事件を見ても、共産党は“臨界点”に達すれば突然、強硬手段に出る」と指摘する。

 ただ中国軍が武力鎮圧に乗り出す事態になれば、国際社会の厳しい批判は免れない。建国70年の節目を前に噴き出した香港の抗議活動は、力で抑え付ける中国式統治の限界を浮き彫りにしているようにも見える。

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 世界2位の経済力を誇り、米国と覇権を争う「大国」はどこへ向かうのか。建国70年を迎えた中国の各地から課題を見つめた。 (香港・川原田健雄)

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