中世のヨーロッパでは、動物相手の裁判を至って真面目に行っていた…

西日本新聞 オピニオン面

 中世のヨーロッパでは、動物相手の裁判を至って真面目に行っていた。イタリアでは16世紀、農作物を荒らしたネズミに「村からの退去」を言い渡している

▼英国では、飼い主をかみ殺した罪で主犯格の豚3匹に死刑判決。残りは裁判長が厳重説諭の上で釈放した。フランスでも母子の豚が殺人罪に問われ、母豚に死刑を宣告。子豚は「将来ある身」と執行猶予になったそうだ

▼現代にも動物裁判は続く。7月に小欄で紹介した「おんどり訴訟」に先日、判決が出た。場所はフランス。原告は島の別荘に越した夫婦。「早朝の鳴き声がうるさい」と、隣家の飼い主に「鶏を別の場所に移せ」と求めていた

▼裁判所は実地調査を実施。鳴く時間は夫婦が主張するほど早朝とは言えず、声も大きくないと認定。逆に話し合いの可能性を探らず不当に提訴した、と賠償金の支払いを命じた

▼外電は「フランスの農村地域で頻発する古くからの住民と新たな住民との争い」の象徴と伝えている。「田舎暮らし」に憧れる都市住民は日本にも多い。けれど、その土地には固有の生活がある。新住民の価値観で旧来のものを一概に否定するなかれ。訴訟はそんなメッセージも含んでいよう

▼判決後、飼い主は「同じ状況に置かれた人みんなにとっての勝利」と喜んだそうだ。おんどり君もさぞ安心したことだろう。「鶏の何か言ひたい足づかひ」。古川柳に心情が重なるような。

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