中国建国70年 「互恵」広げる長期戦略を

西日本新聞 オピニオン面

 「巨竜」の名のごとく、この国は驚異的な発展を続け、国際社会のパワーバランスを揺さぶる大国へと成長した。日本はその姿をしっかりと見据え、臆することなく隣国として向き合う覚悟と戦略を持たなければならない。

米と並ぶ「強国」へ

 中国はあす、建国70年の節目を迎える。1949年に毛沢東が新中国の成立を宣言して以来、国家建設は幾多の波乱や曲折を伴ってきた。その中で、歴代指導者はこの言葉を唱えてきた。

 「中華民族の偉大な復興」。遠大な表現は政策目標というより、国民向けスローガンの色彩が強かった。それが具体的な政策や成果として輪郭を表し、今の習近平国家主席は強気の姿勢を貫く。

 国内総生産(GDP)は日本の2倍を超え、米国に迫っている。情報技術、軍事技術、宇宙開発などでも頭角を現し、もはや途上国とは呼べない。習主席は「復興が新時代に入った」とし、米国と並ぶ「強国」を目指す「100年戦略」を明示している。

 中国共産党結党100年になる2021年に「小康社会」(少しゆとりのある社会)を全面達成し、建国100年になる49年までに世界一級の軍隊を備えた「社会主義現代化強国」を実現する-。

 習氏のこの指導理念は「新時代中国の特色ある社会主義思想」とされ、独自の手法で国内改革や大国外交を進める方針もうたう。

 中国の対外戦略は従来「韜光養晦(とうこうようかい)」だった。国力が整うまで能力を隠して内に力を蓄える-という意味だ。習氏はその姿勢から脱し、国家主席の任期撤廃をはじめ、海洋権益の拡大、中国主導の「一帯一路」(現代版シルクロード)構想など、中国の力を国内外に強くアピールしている。

広がる民主化要求

 「トゥキディデスのわな」。中国の強国路線は反動を生み、今の米中関係はこんな言葉で形容される。歴史の必然として「既存の覇権国と新興大国は衝突する」という意味だ。古代ギリシャの歴史家トゥキディデスの著述にちなむ。

 実際、トランプ米政権は中国を「米国への挑戦者」とみなし、貿易での圧力や中国の人権抑圧姿勢への批判などを強めている。国際社会全体として、海洋進出をはじめとした中国の覇権的な動きへの警戒感や民主化の遅滞への失望感も広がっている。習政権はこの状況に目を向けるべきだ。

 中国国内では、情報化の進展で国民が内外情勢を詳しく知る環境が生まれ、共産党による情報統制はもはや難しくなっている。政府が無理に統制を進め、人権抑圧に動けば国民の間にそれが広く伝わり、むしろ民主化要求は高まる。そんなジレンマを抱える構図だ。

 香港での大規模デモで中国政府が武力介入を避けた背景にも、そうした事情が透ける。今後、民主化や人権状況の改善は避けては通れない命題になるはずだ。

深化する日中関係

 日中両国間では昨年、久々に安倍晋三首相と李克強首相の相互公式訪問が実現した。来年は習氏が主席として初めて公式訪日する予定だ。中国側に対日接近で米国をけん制する思惑があるとしても、首脳対話を繰り返すことは重要だ。そこで提起したいことがある。

 日中間には、国交正常化時の共同声明をはじめ四つの基本文書がある。このうち平和友好条約では「全ての紛争を平和的手段で解決する」「互いに覇権を求めない」としている。これに照らせば今の中国の動きは看過できない。そのことを対話の場では毅然(きぜん)と指摘し続け、自制を求めることだ。

 日中の対立は東アジアに緊張をもたらし、地域の安定を危うくする。この認識を深く共有したい。外交上譲れない対立があっても、それを民間交流に波及させないことも確認し合うべきだ。日中が貿易や技術提携などを進める「互恵」関係を維持、拡大することが何より双方の利益につながる。

 中国発展の恩恵として訪日ラッシュが続く。中国の人々が観光を堪能し、日本経済が潤う「互恵」も一段と広げたい。日中間の人の往来は今や年1千万人を超え、特に中国側で「親日」の機運が徐々に広がり、関係は深化している。

 中国は50年、100年単位の時間軸で国家建設を進めている。その方向性はともかく、日本側もそれを踏まえ、長期的な視点で中国と向き合い、渡り合っていく姿勢を持つことも肝要だろう。

 中国に最も近い九州の人々が長年、こつこつと紡いできた日中の草の根交流の輪も大事に守り育てていきたい。

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