1人じゃないと知ることで 菊池良和(九州大病院・吃音外来医師)

西日本新聞 医療面

 吃音(きつおん)はずっと誰にも言えない悩みでした。小学校高学年から大学生まで、言葉が詰まると「失敗した」と反省する日々。「どもってはだめ」と思い込んでいました。

 転機は22歳。吃音のある人の会「言友会(げんゆうかい)」をテレビ番組で知ったこと。「本当に自分と同じ吃音の人がいるのか?」。確かめたくて、福岡市であった例会に参加しました。

 そこにはさまざまな人がいました。明らかに吃音があると分かる人、「この人本当に吃音があるの?」と疑うくらい流ちょうに話せる人…。話し方はそれぞれでしたが、話す場面での困り感、自分だけが悩んでいるという孤立感は共通していました。

 入会から3カ月目。1泊2日の九州大会での懇親会で酒を飲みながら、悩みを吐き出しました。「散髪屋が苦手」「洋服は店員が話し掛けるような店には行かず、黙って一人で買える店に行く」「話す前の緊張と、詰まった後の落ち込みさえなければなあ」…

 すると「僕も同じ」と皆が共感してくれました。同じような体験談を聞いていると、心の底からうれしさと安堵(あんど)が湧き上がりました。「僕だけではなかったんだ」。朝5時までどもりを気にせず、語り合うことができました。

 言友会は1966年に発足。吃音のある人が集まる場として、50年以上活動している歴史ある団体です。全国に34の拠点があり、悩みを共有するだけでなく、生きていく知恵や役に立つ情報を分かち合う場でもあります。

 学校や勤務先などで吃音をひた隠しにしている人も、言友会では安心して自分をさらけ出せます。私自身、いつしか吃音を言い訳に避けていた事にも挑戦するようになりました。自分を客観視できるようになり、生きやすくなりました。

 同じような悩みを抱えている人はいませんか。一緒に解決していきましょう。

(九州大病院医師)

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