友情の居酒屋2日開店 病から復活、親友が支援 松浦市

西日本新聞 長崎・佐世保版 福田 章

 病に倒れた親友の料理人を再起させたい-。同級生の友情が生んだ居酒屋「櫟(くぬぎ)」が2日、松浦市志佐町にオープンする。まひした体のリハビリを続け、厨房(ちゅうぼう)に立てるようなった佐野政嗣さん(52)。市役所を早期退職し、客商売に踏み出した川浪剛人さん(52)。手を携え、誰もが気軽に立ち寄れる店を目指す。

 2人が出会ったのは松浦高。やけにウマが合った。1985年に卒業後、川浪さんは福岡市の私大へ進み、松浦市役所に入った。

 家業の食堂で母親が料理するのを見て、小学生の頃から料理人になろうと思っていた佐野さんは大阪の全日空ホテルへ。1年間、和食部門のホールに立った。「刺し身の盛り合わせや丼物が和食料理だと思い込んでいたから、本格的な和食はカルチャーショックだった」。86年に東京の全日空ホテルへ異動し、料理人としての腕を磨いた。2008年には広島の系列ホテルが活躍の場となった。

 2人は頻繁に連絡を取り合い、互いに近況を伝えていた。12年3月の夕方だった。「これから焼き肉を食べにいくよ」。川浪さんに電話した後、佐野さんからの連絡が途絶えた。

 佐野さんは帰宅して入浴後に倒れていた。目覚めると病院のベッド。松浦市から駆け付けた兄がそばで見守っていた。診断は脳出血。左半身がまひしていた。川浪さんが見舞いに行くと、佐野さんは泣いた。「やんちゃな男だったのに…。寂しくて、つらかったんだと思う」と川浪さん。

 佐野さんは車椅子でリハビリに励んだ。広島から大分県の病院に移り、短大に入学して栄養士の資格を取った。「歩きたい。厨房に戻りたい」。その一心で前を向く姿を見て、居酒屋を経営しようと川浪さんは決心した。

 「佐野をこのままにしておけなかった。気安く集まれる空間をつくり、一流の料理人の腕前を楽しんでもらうのも地域貢献と考え、市役所を早期退職した」

 親友の決断に佐野さんは感激し、今年8月に帰郷した。店は9月初めにプレオープン。自慢の料理は天ぷらだ。「華やかな都会が好きだったが、今は料理ができる喜びを感じている」。左脚に装具を付け、正座はできないが、包丁を持つ手に狂いはない。

 高校を卒業して34年と半年。古里の同級生たちの笑顔に励まされ、52歳の2人は再出発する。(福田章)

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