3社長薄い当事者意識 かんぽ保険不正販売 “組織の不備”に転嫁

西日本新聞 社会面 宮崎 拓朗 森井 徹 飯田 崇雄

 信頼回復に向けた道のりの険しさが浮かび上がった。かんぽ生命保険の不正販売に関する30日の記者会見。日本郵政グループ3社長はそろって信頼を損ねたことを謝罪する一方で、経営責任については重ねて否定した。現場で起きている深刻な事態を把握できず、当事者意識の希薄さをさらけ出した経営トップに、顧客軽視とノルマ偏重の企業体質のうみを出し切ることができるのか。

 「現場から情報が上がってこないことには話が始まらない」。日本郵政の長門正貢社長は会見で、人ごとのように繰り返した。

 過去5年間で約1400件の法令違反が確認された不正販売。なぜこうした深刻な実態を把握できなかったのか。かんぽ生命の植平光彦社長は「真摯(しんし)に反省し、取り組み強化を進める」と述べるばかり。肝心の理由には触れず、長門氏も「現場からの直訴にタッチできる組織的な手当てが必要」と“システム不備”に責任転嫁した。

 現場との距離感は深刻だ。過大なノルマや営業目標が今回の事態を招いたとの指摘に対し、長門氏は当期利益が上振れしたことなどを挙げ「ものすごい無理な数字を、法外な根拠レスの数字を置いたという自覚はない」と言い切った。

 経営トップとしての責任に言及する場面はほとんどなく、日本郵便の横山邦男社長は営業再開時期の再延期についても「お客さまなどのご意見、それから関係各所から時期尚早という意見があった」。早期再開に懸念を示す高市早苗総務相の意向で当初方針を断念したことをあえて示唆した。

 NHKへの抗議問題でも弁明を重ねた。長門氏は、NHKが開設した番組制作のためのウェブサイトに「押し売り」「詐欺」「元本割れ」との言葉が躍っていたことに「報道の方向が偏っていないかと感じた」。NHKの上田良一会長と経営委員会に文書を送ったが、事実関係は一切調べなかったという。

 「こんな形で番組がつくられるのはひどい、というグループ内の議論に得心していた」。トップとして現場の実態把握を怠りながら、人ごとのような口ぶりが変わることはなかった。 (飯田崇雄、森井徹)

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不正件数さらに拡大も 顧客の意向確認4割弱

 かんぽ生命保険の不正販売問題で、法令違反や社内規定違反の疑いがある契約が6327件に上ることが明らかになり、不正が見過ごされてきた実態が浮き彫りとなった。問題発覚から約3カ月。顧客の意向が確認できたのは全体の4割弱にとどまり、今後さらに増えるのは確実だ。日本郵政グループは年内までに調査を終えるとしているが、見通しは不透明だ。

 かんぽ生命が「顧客が不利益となった可能性がある」と認定した18万3千件のうち、顧客の聞き取りを終えたのは約6万8千件。不正が疑われる契約の内訳としては、乗り換えの際に旧保険の解約時期を意図的に遅らせて新旧保険料を二重払いさせた事案が5449件で、8割超を占めた。

 今回の社内調査では、局員が顧客に対し「半年間は解約できないルールになっている」と虚偽説明した法令違反や、二重払いを説明した上で「何とかお願いしたい」と依頼した社内規定違反が確認された。

 これまでかんぽ生命が保険業法などの法令違反で金融庁に届け出たのは年間20件前後。だが、社内調査では過去5年間で約1400件に上ることが判明し、内部チェックのずさんさを露呈した。特別調査委員会の中間報告によると、かんぽ生命では不正が疑われる事案が発生しても、局員が否定した場合は不正と認定してこなかったという。

 不正の疑いがある契約6327件は顧客からの聞き取りを基にした数字で、今後は局員から聞き取りをし、不正に当たるかどうかを判断する。両者の言い分が食い違う場合はグループ内のコンプライアンス部門が総合的に判断するというが、これまで不正を見過ごしてきた身内の調査で十分な認定ができるか疑わしい。

 同社は約3千万件の全保険契約についても、はがきによる意向調査を進めている。ただ、現時点で返信があったのは68万件にとどまり、簡易な書面郵送だけの調査方法に身内からも「不十分だ」との指摘が上がる。同社の植平光彦社長は記者会見で「不正は一件も許さないという姿勢でやっていきたい」と強調した。

 コンプライアンス問題に詳しい郷原信郎弁護士は「不正についての情報が経営陣にどこまで上がり、どう対処したのか。徹底して事実を積み上げ、調査をすべきだ」と述べた。 (宮崎拓朗)

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