闘病の子に寄り添う 病院で働く犬 国内3ヵ所で導入、費用が普及の壁に

西日本新聞 くらし面 新西 ましほ

病室で城戸康平君に触れ合うアニー(7月撮影、シャイン・オン・キッズ提供) 拡大

病室で城戸康平君に触れ合うアニー(7月撮影、シャイン・オン・キッズ提供)

ファシリティードッグについて調べた清武琳君

 小児がんなど重い病気の子どもに寄り添い、不安を和らげるために病院で働く犬がいる。病室で添い寝したり、手術室に付き添ったり。「ファシリティードッグ」と呼ばれ、子どもを癒やし、励ます存在だ。ただ、費用などが壁となり国内の導入は3病院にとどまっており、派遣団体は多くの人に知ってもらい、活躍の場を広げたいとしている。

 「アニーをなでると心が落ち着く」。川崎市の城戸康平君(14)は白血病の治療のため、8月まで神奈川県立こども医療センター(横浜市)に入院していた。そこで出会ったのがファシリティードッグのアニー(ゴールデンレトリバー、雌、3歳)だ。「人懐こくて賢くて。人の気持ちが分かるみたい」

 母親の俊江さん(49)は言う。「康平はつらいとか苦しいとか、自分の気持ちを表に出さない子。アニーと接して気持ちがほどけていくのが分かって、見ている私も救われた」

 康平君の入院は11カ月に及んだ。治療の副作用で気持ちが落ち込んでベッドから出られなくなったとき、起き上がるきっかけになったのはアニーをなでるためだった。末梢(まっしょう)血管細胞移植後、合併症で危ない状態に陥り、ようやく話ができるようになったときに出た言葉は「アニーに会いたい」。リハビリや検査にも付き添ってもらった。

 俊江さんは「頑張れたのは、アニーの存在が大きい。話すことも、手を差し伸べることもできないけれど、犬と人という関係を超えて魂と魂が触れ合っているように感じた」と話す。

   ◇    ◇

 アニーは「ハンドラー」と呼ばれる専門の訓練を受けた看護師森田優子さん(38)とペアになり、平日に約3時間活動している。訪問して患者を癒やすセラピードッグと違って病院に常駐し、麻酔導入や注射の処置に立ち会うなど治療計画に組み込まれている。

 「アニーがいるからと、注射を頑張れたり、起き上がれるようになったり。癒やすだけでなく、子どもの力を引き出して治療の手伝いができる」と森田さん。子どもの前でつらい気持ちを吐き出せない親の精神的なケアも担っているという。

 アニーと森田さんを派遣しているのは、東京のNPO法人シャイン・オン・キッズ。ファシリティードッグは欧米で2000年ごろから活躍し始め、日本では10年に初めて静岡県立こども病院に導入され、12年に同センター、今年8月に都立小児総合医療センターと続いた。

 米国では年100頭以上が誕生しているが、日本には育成施設がないことや費用がハードルとなり、広がっていない。1頭が活動するには、犬の譲渡費や研修費などで初年度に約1200万円、以降はハンドラーの人件費など年約900万円が必要だ。病院が一部を負担しているものの、費用の大半を同法人が寄付で賄う。

 森田さんは「衛生面を懸念する声もあるが、感染対策を徹底していて心配ない。実際の治療効果を知ってもらって導入施設を増やし、いつか全ての子ども病院にファシリティードッグがいるのが当たり前になってほしい」と話している。

 同法人は25日まで、インターネット上で寄付を募るクラウドファンディングのサイト「Readyfor」で活動資金を募っている。目標額は1千万円。
 (新西ましほ)

 ●入院体験踏まえ「導入計画書」 本紙こども特派員 福岡の清武君作成 「存在を知って」

 夏休みの自由研究として、ファシリティードッグを病院に導入するための計画書をまとめた小学生がいる。西日本新聞もの知りこどもタイムズのこども特派員で、福岡県粕屋町の粕屋中央小5年、清武琳君(10)。脊柱側彎(そくわん)症で年2回、福岡市立こども病院に入院して手術する中で思いが募り、市長や病院、団体に手紙も出した。

 計画書はA4判で70枚を超える。「手術の前、麻酔のときがとても怖いです。だからファシリティードッグがいたらどんなにいいだろうかと思います」とつづる。調べていくうちに、金銭面で難しいことを知る。

 「一番大事なのはたくさんの人にファシリティードッグのことを知ってもらうこと」「ベイリーという犬が日本初のファシリティードッグになってから10年もたつのに、ぼくも去年までベイリーのことを知りませんでした。ファシリティードッグのことを知れば、導入のために応援してくれる人も増えると思います」。こども特派員としていつか取材し、記事を書きたいという。

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