寄り添う喜び 若い担い手が発信 介護・福祉の団体が一丸 裾野を広げたい

西日本新聞 くらし面 三宅 大介

「福岡の福祉文化の転換点となる一日になってほしい」と願う実行委員長の小笠原靖治さん 拡大

「福岡の福祉文化の転換点となる一日になってほしい」と願う実行委員長の小笠原靖治さん

●12日に福岡市・天神で魅力伝えるイベント

 誰かの生きがいを日々支え、寄り添う。そんな触れ合いは、ただの仕事にとどまらない喜びがある-。介護・福祉のイメージアップを狙い、現場で働く世代や将来の担い手となる学生たちが魅力を発信するイベント「ふくおかカイゴつながるプロジェクト2019」が12日、福岡市・天神で開かれる。趣旨に賛同し、主催・共催に名を連ねたのは福岡県内で10を超える業界団体。つなぎ役となった実行委員長で、福岡介護福祉専門学校校長の小笠原靖治さん(47)は言う。「福祉に携わる人たちが育つ土壌と文化をつくり上げたい。皆、その一心です」

●業界を巻き込み

 低収入、重労働がことさら強調されるなど介護、福祉業界のマイナスイメージは根強い。介護福祉士を目指す養成施設(学校)の一般学生はここ10年、全国で5割近く減ったとされる。

 昨年度まで小笠原さんが会長を務めていた福岡県介護福祉士養成施設協議会(15校)が学生によるプロジェクトチーム「Re Life」を発足させ、魅力を発信する活動を始めたのは5年前。「当初はフリーペーパーを発行したり、その後は介護食の試食や介護技術体験のイベントをしたり。ただ『学生さんが頑張っているね』という評価で終わってしまって、違和感がありました」。自分も働き手を目指したい、という人の裾野の広がりは乏しかったからだ。

 「やはり業界を巻き込んで、現場で働く人たち自身が発信しないと難しい」と思うようになった。

●育成役がつなぎ

 特別養護老人ホームなど各施設でつくる県内各地の業界団体や支援団体も、それぞれイベントなど介護職のPRに努めていたものの、横の連携はなかった。

 昨春、福岡市が政令市では珍しい「福祉人材検討担当」職を創設。小笠原さんは担当者と思いを語り合う中で「問題意識が同じで、業界全体が一丸となった魅力発信が不可欠という認識で一致した」という。

 今年2月、市が主催した介護福祉イベント。協力した支援団体の一つ「福岡福祉向上委員会」の企画で、認知症の人が店員を務めるめんたい茶漬け店が一日限定オープンした。学生がサポートしながらお年寄りが接客する心温まる光景が多くのメディアに取り上げられ、業界内でも大きな話題となった。

 「多くの団体がつながるなら、このタイミング」と考えた小笠原さん。年度が変わった4月、業界団体に声を掛け、介護や福祉関係者が一堂に会し、発信するイベントへの参加を募っていった。「みな好意的で、ほとんどの団体が賛同してくれた」のはやはり、このままでは業界が先細りしかねない危機感からだろう。福岡市の都心屈指のイベント会場として知られる市役所の広場を「市が確保してくれた」のも大きかった。

 「私がいずれ各現場で働く学生を育てる立場だったので、つなぎ役になれたのかもしれません。本番は各団体それぞれが主役です」

●共生社会目指し

 当日、メインステージでは介護の道を志す学生や現場の働き手による「介護の魅力」についてのスピーチや介護技術、最新の福祉機器などを紹介。車椅子のモデルたちによるファッションショーなどもある。

 30を超すブースでは、認知症の人だけでなく、障害のある人も接客する飲食店なども登場。「高齢者、障害者らを含めた共生社会も意識したい」からだ。

 「治す、治療する仕事の医療職と異なり、福祉職は『治らない人たち』をどう支えていくか、というところから始まる。何かを失った人に、新しい自分らしさや生きがいを、支えながら一緒に見つけていくやりがいがある」。小笠原さんは日々、学生たちにそう言い続けている。

 その役割と、仕事の苦労を超える醍醐味(だいごみ)と。「今回のイベントを入り口に、志す学生にも、働き手や経営者にも、あらためて意識してもらい、明るい福祉社会を目指してほしい」。介護・福祉職の新たな価値観が生まれ、根付いていく一歩となることを、小笠原さんは願っている。

★ふくおかカイゴつながるプロジェクト2019★

 12日午前10時半~午後5時、福岡市・天神の市役所西側ふれあい広場。スペシャルステージでは、車椅子ファッションショー(正午)▽学生らのスピーチやのど自慢など「KAIGOマジフェス2019」(午後0時半)▽認知症の人や支援者らがたすきをつなぐ「RUN伴+」のゴールイベントと、福岡を拠点とするアコースティックバンド「ミサンガ」のスーパーライブ(午後3時)-など。ブースでは、高齢者らが運営するカレーやパン、焼き菓子などの食堂、介護用の牛丼やうなぎの提供、物販、健康測定や、施設・設備・サービス紹介-などが楽しめる。

(三宅大介)

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