博多駅前、若者嫌がる音の正体 商業施設の入り口で「キィーン」 モスキート音ではなく…

西日本新聞 ふくおか都市圏版 坂本 信博

 JR博多駅(福岡市博多区)前の商業施設、KITTE博多。「あの横を通ると、高校生の娘が必ず耳を押さえて『キーンって音が鳴ってる。早く通り抜けよう』と言います。何かの装置があるんでしょうか」。福岡市の40代女性から特命取材班に調査依頼が寄せられた。女性には聞こえない音だという。若年層にだけ聞こえる「モスキート音」で、店先でたむろする人を追い払っているのだろうか。若者向けの店が集まる場所になぜそんな装置が必要なのか。調べてみた。

 まずは現場を訪れた。多くの人が行き交うKITTE入り口の自動ドアに近づくと、キィーンというかすかな音が頭の上から降り注いできた。長く伸びた爪で黒板をゆっくりひっかいているような音。細い針で脳や体の奥を刺される感覚だ。別の入り口では異なる音域の音がしたが、不快な点は一致した。天井を見上げると、パネルの間に小さな装置があったり、機械が埋め込まれたりしていた。

 一体、何の音なのか。KITTE博多に聞いてみると「モスキート音ではなく、超音波防鼠(ぼうそ)装置の音なんです」(広報担当者)。ターゲットは若者ではなくネズミ。飲食店もある館内への侵入を防ぐ衛生管理の一環で、2016年4月の開業前から全ての出入り口に計69台設置しているという。

 モスキート音は、耳元を蚊が飛ぶような不快な高周波音で17キロヘルツ前後。KITTEの防鼠装置の音は19キロヘルツ。ヘルツとは、空気などの振動数を表す単位で、数値が増えるほど高い音に感じる。人間は20代後半から徐々に高い音が聞きづらくなるとされる。KITTEの装置は、ネズミが嫌がる二つの周波数の超音波を、2カ所からランダムに発信する仕組みという。

 「気持ち悪くなる」「なぜ若者が嫌がる音をわざわざ出しているのか」といった苦情が寄せられたこともあるが、担当者は「お客さまが館内で快適に過ごせるようにするための対策で、若者よけのモスキート音というのは誤解。むしろ若い方にぜひご来館いただきたい」と力を込めた。

 超音波でネズミの侵入を防げるのか。害虫駆除資材専門商社の環境機器(大阪)によると、適切に使えば一定の効果は期待できるが、ネズミの習性や環境の違いもあり、有効な手段は現場ごとに異なるという。同社は「ネズミが好む環境をつくらないことが重要。エサを絶つために食品や生ゴミを適切に管理し、すみかとなる場所を作らないように侵入経路の清掃や補修をするなど、日常的な衛生管理にも目を向ける必要がある」と話している。

 聞こえるか聞こえないかのキィーンは、街の片隅で「人間とネズミの戦い」が日々繰り広げられている証しなのだった。 (宮崎真理子、坂本信博)

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