大雨被災くじけぬ絵筆 佐賀市の塚本さん、福岡市で作品展

西日本新聞 佐賀版 下村 佳史

奇跡的に損傷を免れた大作の横に立つ塚本猪一郎さん 拡大

奇跡的に損傷を免れた大作の横に立つ塚本猪一郎さん

浸水した佐賀市のアトリエ

 8月の記録的な大雨で佐賀市多布施のアトリエが浸水し、多くの作品を失った画家、塚本猪一郎さん(63)の作品展が福岡市早良区石釜の「早良美術館るうゑ」で開かれ、奇跡的に損傷を免れた大作を中心に展示されている。心に浮かんだ情景を自然のままに描いたという作品は、苦難を受け入れながら前向きに創作を続けようとする塚本さんの心を映し出しているようだ。

 佐賀市久保田町の自宅にいた塚本さんが、アトリエの浸水を知ったのは8月28日朝。50センチ以上浸水している建物周辺の画像を知人がメールで送ってくれた。だが、通行止めのためアトリエには近づけず、建物に入れたのは水が引いた夕方になってからだった。

 アトリエを設けて15年。これまで浸水の経験はなかったが、今回の被害は深刻だった。制作中や仕上がったばかりの作品はイーゼルに載せたり床に置いたりして、過去の作品も低い棚に保管していたからだ。水彩や版画の作品には水が染み込み、油絵やアクリル画はキャンバスから絵の具がはがれ、表面にシミが残った。若い時代から大切にしてきた作品約400点を廃棄せざるを得なかった。

 しかし、新作の大作5点は一部水に漬かりながらも、大きなダメージを受けなかった。「花びらのように」と題が付いた抽象画が今回のメイン作品となり、案内状でも紹介している。

 「失われたら計り知れない痛手だった。よく生き残ってくれたと愛情を深く感じています」

 偶然に救われた作品もあった。今回展示の版画作品約40点は、ちょうど自宅で刷ったばかりで、アトリエに持ち込んでいなかった。

 年内には東京、大阪など5カ所で個展が予定されている。「失われた過去の作品を振り返ってはいられない。新しい作品を作るしかない」。早くも塚本さんの心には、新たに表現する作品が浮かんでいる。

 作品展は6日まで。入館料200円。美術館=092(803)1681。(下村佳史)

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