首相所信表明 挑戦の優先順位を誤るな

西日本新聞 オピニオン面

 安定した政治の基盤を何のためにどう生かすか。それが、長期政権の締めくくりに向かう安倍晋三内閣の要諦(ようてい)であろう。

 国民の声に耳を傾け、地に足のついた政策の実現と謙虚な政権運営を首相に求めたい。

 臨時国会が召集され、安倍首相が所信表明演説をした。「1億総活躍社会」「全世代型社会保障」「地方創生」「経済最優先」「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」…。安倍政権が打ち出してきた数々のキャッチフレーズが演説の随所にちりばめられた。

 豊富な政策目標は長期政権の証しかもしれない。だが、同時にそれらは現在進行形か未完の政策でもある。こうした「道半ば」の課題に適切な優先順位を付け、実現を目指す努力が必要ではないか。

 演説の冒頭部分で首相は「最大の挑戦は、急速に進む少子高齢化だ」と力説した。その考えに私たちも異存はない。

 幼児教育・保育の無償化について首相は、小学校から中学校9年間の普通教育無償化以来、「70年ぶりの大改革」だと自画自賛した。来年4月からの高等教育無償化も見据えて子育て世代の負担を減らし「少子化に立ち向かう」と決意を語った。

 しかし、問題は少子高齢化が一段と深刻化する将来への中長期的な準備と対策である。

 政権が取り組むべきは、金融庁審議会の報告書を年金制度への不安をあおったとして封印することなどではあるまい。

 「不都合な真実」も俎上(そじょう)に載せて持続可能な社会保障の在り方を議論していくことだ。増税の是非も含めて「痛みを伴う改革」の道筋を描くことこそ、長期政権の挑戦にふさわしい。

 得意の外交はどうか。首相は日米貿易協定の意義を強調し、米トランプ政権との連携をアピールした。来春、国賓として来日する習近平国家主席の中国との円満な関係も誇示した。

 対照的だったのは韓国との関係だ。「重要な隣国」と言いつつ、元徴用工訴訟問題を念頭に「国と国との約束を遵(じゅん)守(しゅ)することを求めたい」と注文するにとどめた。「地球儀を俯瞰」しながら、肝心の「近隣外交」に出口の見えない難題を抱える。残念ながら、それが現実だ。

 悲願の憲法改正に首相が言及したのは演説の最後だった。「国創り」の「道しるべ」は憲法だ-として、憲法審査会での議論を国会議員に呼び掛けた。

 改憲に固執する首相の意欲は伝わるが、それは国民にとって決して最優先課題ではない。憲法論議は落ち着いた環境と条件で、期限を切らずに与野党の幅広い合意を形成するのが筋である。「挑戦」の優先順位を見誤ってはならない。

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