人生に似た苦みと爽快さ 地ビール造りで地域貢献 醸造所経営 村井真吾さん

西日本新聞 ふくおか都市圏版 日高 三朗

自ら手掛けた地ビール「ちよエール06」(左)を差し出す村井真吾さん。右は店で提供する八女で造られた地ビール 拡大

自ら手掛けた地ビール「ちよエール06」(左)を差し出す村井真吾さん。右は店で提供する八女で造られた地ビール

 人生はビールの味のごとし-。口に含むと苦けれど、飲み干せば爽快な味は起伏に富む人生と似る。転職を経て世界を飛び回り、ビールの味を知った大分の男性が福岡市に醸造所を開いた。注げば琥珀(こはく)色の上にしばらく漂う泡とは違う、地域に根差した息の長い醸造所を目指す。

 10月といえば、日本でも定着しつつあるビール祭り「オクトーバーフェスト」が待っている。大分県中津市出身の村井真吾さん(33)は昨年11月、福岡市博多区千代にたった1人でパブを兼ねた小規模醸造所「あすなろブルワリー」を立ち上げた。

 当初は古里での創業を目指したが、税務署に相談すると市場の大きな都市を勧められた。「福岡なら若者や外国人も多く流行にも敏感」。市営地下鉄千代県庁口から近い場所に決めた。

 地ビール造りの職業にたどり着くまでに、さまざまな経験を味わった。大学卒業後の社会人1年目。就職した自動車部品メーカーで上司と反りが合わず辞めた。別の仕事に就いた後、気分転換で訪れた国内の空港で目についたのが、頭にスカーフを巻いたアラブ首長国連邦の「エミレーツ航空」の社員だった。

 その姿に自然と興味を引かれて求人に応募。高校時代に1年間、ドイツ留学した経験が買われて入社できた。8年間で100カ国以上の空を飛び回った。

 ただ、ここがゴールとは感じなかった。「30歳まで多くの人に会い、経験して、別の世界に飛び込みたい」。帰国後に読んだビール造りの本に夢中になった。客室乗務員時代、各国でビールを楽しみ、写真に収めるなど関心の高い分野だった。

 2年前、語学力を生かしドイツの醸造所に「無給でいいからビール造りを学ばせてほしい」と頼み込んだ。バイエルン州の醸造所で半年間研修することができたが、開業には醸造設備だけでも2千万円ほどかかるとの見積もりだった。幸運なことにエミレーツ航空の元同僚のつてで、ベトナムのビールメーカー社長と知り合い、質が良く安価な設備購入にめどが立った。

 雑誌にも紹介され、口コミもあって、少しずつ客足は伸びている。醸造した「ちよエール06」はグレープフルーツなどかんきつ系の香りがするホップを使い、鼻に抜けるようなさわやかな香りが特長。「まだまだ勉強中。今後は苦みが強いアメリカ人好みのIPA(インディア・ペール・エール)を醸造して店で出したい」と力を込める。

 自営業を長年営む両親の教え「もうけだけでなく地域に貢献しなさい」が常に念頭にある。母校の高校の後輩に留学の機会を与えたいと奨学金提供を申し出ており、「千代の地でも教育に役立てることを考えたい」。あすなろブルワリー=092(710)4842。 (日高三朗)

 ▼福岡オクトーバーフェスト 18日(金)~27日(日)午後4~10時(土日、祝日は午前11時開始)、福岡市博多区上川端町の冷泉公園特設会場。入場無料。ドイツのミュンヘンで200年以上続く祭りを再現。会場には「パウラーナー」「ハッカープショール」などの銘柄を中心にしたドイツのビールと料理が集結する。

福岡県の天気予報

PR

PR

注目のテーマ