検疫探知“ワンダフル” 福岡空港、3匹奮闘中 病原体発見、九州の畜産守る

西日本新聞 西村 百合恵

手荷物受取所でスーツケースのにおいをかぐ検疫探知犬「次郎」=9月20日午後、福岡空港 拡大

手荷物受取所でスーツケースのにおいをかぐ検疫探知犬「次郎」=9月20日午後、福岡空港

乗客の手荷物を調べる検疫探知犬の次郎=9月20日午後、福岡空港 検査が必要と判断したら「お座り」して職員に合図を送る=9月20日午後、福岡空港

 海外から国内への持ち込みが禁止されている肉製品や果実を、においだけで見つけ出すスーパー犬がいる。人間の1億倍もの嗅覚を持つ「検疫探知犬」だ。病原体のまん延を防ぐため、空港など水際で乗客の手荷物から禁制品を発見する。九州の空の玄関口・福岡空港では3匹が奮闘中。今年は、世界で猛威を振るうアフリカ豚コレラのウイルスが検出されたソーセージを発見したり、家畜伝染病予防法違反容疑での容疑者逮捕につながったりと大活躍だ。

 9月下旬、福岡空港国際線ターミナルの手荷物受取所。「農林水産省 検疫探知犬」と記された水色のゼッケンを着けたビーグル犬の次郎(雄2歳)がいた。荷物をターンテーブルから取る乗客に訓練士が「失礼します」と声を掛けると、次郎は黙々と荷物を「クン、クン」「クン、クン」。

 ある男性客の持っていた紙袋の横でお座りして、訓練士を見上げた。「異常」を知らせるサインだ。紙袋からは、出発時に現地の空港で買ったサンドイッチが見つかり、没収された。次郎の鼻は材料のハムを見逃さなかった。かわいいだけじゃない、能力の高さだ。

 ペットとして人気のビーグル犬はもともと狩猟犬。その中でも探知犬は、民間の施設で半年以上の訓練を経て、性格や適性で選抜される「エリート」だ。スーツケース内の真空パックの肉も嗅ぎ分け、果実は品種ごとににおいを記憶する。

 2005年に成田空港に初めて配置され、現在は全国9カ所の空港と郵便局で計35匹が活動。福岡空港では13年にタンク(雄8歳)とアリーシャ(雌8歳)が、昨年次郎が仲間入りした。

 福岡空港は昨年、外国人入国者数が241万5千人と過去最高を記録した。国際線の約8割は中国や韓国、フィリピンなどのアジア路線。出国時の検疫が不十分な可能性があり、探知犬が必ず出動する。出番がない日も「能力維持のため訓練を欠かさない」(関係者)というストイックさだ。

 利用客の増加に比例し、禁制品の持ち込みも増えている。昨年は、12年に比べて4倍の約4千件(約5千キロ)に達し、半数を探知犬が発見した。今年1月27日と31日、中国・青島空港から持ち込まれたソーセージからアフリカ豚コレラのウイルスを相次いで検出。5月にはフィリピンからソーセージなど計91・9キロを発泡スチロールの箱で密輸したのを見つけた。

 「かばんを開けたら丸鶏が出てきたこともある」と農水省動物検疫所門司支所福岡空港出張所の阿久沢義徳所長。サルや猛禽(もうきん)類をペットとして連れ帰る人もいるそうだ。

 九州は養豚など畜産業が盛んだ。ひとたびウイルスが流行すると畜産農家に打撃を与え、風評被害などにつながる恐れもある。同空港は来年の夏ダイヤ以降、発着枠を現在の1時間当たり35回から38回に拡大する方針で、利用客は増える見込みだ。阿久沢所長は「九州の畜産業を守るため、検疫で何としても食い止めると気を引き締めている。訓練士と探知犬の“人犬一体”で安全安心を守りたい」と話した。(西村百合恵)

家畜伝染病予防法】家畜などを輸出入する際、農林水産省動物検疫所で検査を受け、証明書の交付を受けることを義務付けた法律。今年4月に厳格化され、違法な畜産物の持ち込みは100万円以下の罰金か3年以下の懲役と規定している。アフリカ豚コレラはブタ、イノシシにダニを介して感染。ワクチンも治療法もなく、致死率は100%に近い。ヒトには感染しない。アジアでは昨年8月に中国で初めて発生し、東南アジアにも広がっている。

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