「ブラック校則」の本質は 評論家・荻上チキさん 福岡市で講演

西日本新聞 くらし面

「根拠がなければ自由を縛ってはならない」と訴える荻上チキさん 拡大

「根拠がなければ自由を縛ってはならない」と訴える荻上チキさん

文部科学省に署名を提出し、校則の現状調査などを要請した「ブラック校則をなくそう!プロジェクト」のメンバー

 多くの学校で定められている校則。教育取材班は今年4~5月、現状を報告し、子どもも教師も一度立ち止まり、見つめ直す必要性を訴えた。今、校則の何が問題なのか。不合理な学校のルールをきっかけに有志で「ブラック校則をなくそう!プロジェクト」を立ち上げた評論家の荻上チキさん(37)が福岡市で講演し、その本質の一端を解き明かした。

「隠れたカリキュラム」

 荻上さんは、校則は特定の学校の中だけに通用する「ローカルルール」と定義する。「コミュニティーを成り立たせるために必要な面もある。それでも、校則がないことで無秩序になるとは思えない」と話した。

 理由として、憲法をはじめとする法律があることに触れ「法律は本来、私たちが持っている権利と自由を制約するものだが、一定の根拠がある」と説明。法を超えないローカルルールは、合理的な範囲内で当事者間の合意があって初めて成立する点を強調した。

 ところが、例えば制服の着用について生徒や教師が議論する学校はほぼ皆無だ。みんながなぜ同じ格好をして、そのために指導を受けなければならないのか。そんな生徒の問いに教師側が納得できる答えを持っているとも言い難い。

 「多くの校則はよく分からないけど、何となく守らなければならないものとされている」。こうした実情を、荻上さんは学校による「隠れたカリキュラム」と呼んでいる。

不適切な運用とのかけ算

 校則には子どもたちが成長するまでの環境を整える狙いもある。冬のロングマフラー着用禁止は安全面に配慮したものとされる。通学時、マフラーが自転車の車輪に絡まったり、車のドアミラーに引っ掛かったりして危険だという。

 荻上さんは「禁止せずにマフラーで事故が起きた場合、学校が全ての責任を負わなければならないような社会なのだろうか」と疑問を投げ掛ける。

 一方で、マフラー着用を事故防止ではなく「おしゃれ」と見たとき、その延長でタイツやコートなど防寒のための格好も禁止される可能性がある。「おしゃれ禁止は突き詰めると中学生、高校生『らしく』ないということ。勉強すべき場の学校には必要ないとの考え方が根底にある」

 「らしさ」が押し付けられれば個性はかすむ。社会は理不尽だから理不尽さに慣れた方がいい、との声もある。「ルールは疑ってはならないと教え込むことも隠れたカリキュラムの一つ。しかし社会で求められているのは理不尽に気付き、変えるための能力だ」。主権者教育を学ぶ学校で、最も身近なルールに子どもたちを関わらせないような雰囲気への矛盾も指摘した。

絶えず見直す姿勢が重要

 荻上さんの持論は「問題校則は、理不尽なルールと不適切な運用の掛け算で成り立つ」。校則で掲げる「清潔な格好」も髪の色や形、下着の色まで厳しく指導するようなら問題とする。

 荻上さんらが行った年代別調査で、校則は校内暴力が社会問題になった40年前よりも厳格化傾向にあった。背景には「教師は忙しく校則で縛る以外に個別指導ができない」ことがある。

 ただ、生まれながらにして黒髪でストレートの人は約6割。残りは茶色だったり、癖毛だったりした。下着の色も白、赤、黒の布を白シャツと重ねた結果、白の下着が最も透けたという。「頭髪も下着の色も根拠がないことは明らか。目につく校則の大半は無意味と思っている」

 問題校則の“副作用”としてのいじめもある。子どもたちは学校生活でさまざまなストレスを抱くが、盗難防止などを目的に、仲の良い友人がいても他の教室への立ち入りが禁じられるケースもある。「発散手段は教室内だけ。いじめがゲームの一つになる」との見方を示した。

 荻上さんは「校則は変えられる」とし、絶えず見直すことの重要性を訴える。「校則はむしろ大事な教材。何が問題でどんな手続きを経てどう変えるか、それを考えることのできるプレーヤーを育てるのが教育だ」(前田英男)

【ブラック校則をなくそう!プロジェクト】2017年、生まれつき茶色っぽい地毛を黒く染めるよう教員から強要され不登校になったとして、女子高校生が損害賠償を求めて大阪府を提訴したことをきっかけに発足。理不尽な校則や厳しすぎる指導を社会全体で考え、見直すことを目的としている。

 昨年、10~50代の男女4000人を対象に調査。若い世代ほど細かい規則を体験し、明らかな体罰は減ったが服をめくってスカート丈をチェックするなどの行き過ぎた指導が見られた。8月には活動に賛同する6万334人分の署名を文部科学省に提出し、校則の現状に関する調査を要請。都道府県や各教育委員会に向けて、理不尽な校則や指導の改善を促す通知を出すよう求めた。

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