福岡、全力追求トライ 挫折越え雪辱8強へ

西日本新聞 社会面 大窪 正一

後半、トライを決める福岡(撮影・中村太一) 拡大

後半、トライを決める福岡(撮影・中村太一)

試合終了間際、チーム4本目のトライを決めた松島。右は福岡(撮影・中村太一) 筑波大2年で初招集された当時の福岡選手(右)とエディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ

 難敵を破り、悲願の8強入りにまた一歩近づいた。ラグビー・ワールドカップ(W杯)第3戦となった5日、日本は序盤苦しみながらも、粘るサモアを後半に突き放した。後半途中出場した福岡堅樹(けんき)選手(27)がチーム3本目のトライを奪うと、赤と白に染まるスタンドは熱狂に包まれた。ロスタイムに入ったラストプレーで松島幸太朗選手(26)が飛び込んで執念の4トライ目。勝ち点にボーナス点を加えた。悲願の8強入りへ。4年前に黒星を喫した強豪スコットランドとの最終戦に、命運を懸ける。

 福岡高出身のWTB福岡選手が後半35分に勝利を決定づけるトライを奪った。負傷明けで逆転トライを決めたアイルランド戦に続く躍動で完全復活を印象付けた。

 地中で何百年も力を蓄え、いったん地上に出ると1日に高さ百丈(約300メートル)の勢いで伸び続けるという浄土真宗の書物にある想像上の樹木「好堅樹(こうけんじゅ)」。日本のエースは自身の名前の由来通り、苦しい時期を経て著しい成長を見せる。

 「やめたい」と思い悩んだ人生最大の挫折を乗り越えた。4年前の宮崎代表合宿。当時の指揮官、エディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)=現イングランド監督=の猛練習に追い詰められた。何ごとにも根拠を求め、合理性や効率を追求する福岡選手。「練習の長さや強度を計算し、体力の配分を考えていた」。世界レベルで戦い抜くため、常に100パーセントの力を出しきる大切さを知るジョーンズHCにはそれが気に入らなかった。

 「グラウンドから出て行け!」。試合形式の練習で全力疾走しない姿にジョーンズHCの怒声が響いた。報道陣も見学者もいる前で、練習から追い出された。屈辱だった。子どもの頃から宿題を学校で済ませるようなタイプ。勉強もラグビーの練習も短い時間に集中する-。それで成果を残してきた自負もあった。

 当時はメンバー争いの当落線上にいた。「本当にきつくて重圧もあり、体もズタボロ。正直やめたいな、ここで逃げ出したら楽だろうなと頭に浮かんだ」。プライドを砕かれ、心が完全に折れかける中、筑波大2年で初招集された時にジョーンズHCから「2019年にチームの中心として引っ張ってほしい」と掛けられた言葉が浮かび、期待の裏返しだと思い直した。

 「効率の良さだけでは足りない世界に初めて気付かされた」。生まれて初めて死に物狂いで練習に取り組むように改め、前回W杯の代表に生き残ったからこそ今がある。あれから4年。苦い教訓を生かして主力に成長。昨秋のイングランドとのテストマッチでは、敵将ジョーンズ監督から「ケンキ(堅樹)はいい選手になった」と絶賛された。互いに勝ち進めば決勝トーナメントで対戦できる可能性がある。「堅樹」が成長の旅をゆく。 (大窪正一)

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