「法治」民主化封じ 出所後も軟禁7カ月

西日本新聞 国際面 川原田 健雄

出所後、自宅を訪ねてきた弁護士仲間と抱き合う江天勇さん(左)(関係者提供) 拡大

出所後、自宅を訪ねてきた弁護士仲間と抱き合う江天勇さん(左)(関係者提供)

中国・河南省信陽市

 「自宅近くの監視小屋に5、6人の男がいて24時間、私を見張っている」。人権派弁護士の江天勇さん(48)は、いら立った口調で訴えた。

 2015年7月9日以降、人権派弁護士ら約300人が一斉拘束された「709事件」。捕まった弁護士仲間や家族を支援していた江さんも16年11月に拘束され、1年後、国家政権転覆扇動罪で懲役2年の実刑判決を受けた。今年2月末に出所したが、当局に連れて行かれたのは、弁護士として活動していた北京ではなく、河南省信陽市の実家。私服の当局者に監視され約7カ月、軟禁状態が続く。

 「散歩にも必ず尾行がつき、写真や動画を撮られる。近所の人と立ち話をすれば『あいつは国の裏切り者だから』と、話し掛けないよう相手に圧力をかけられる」と江さん。

 親戚や友人が訪れると厳しく身元を調査。身分証提示を拒否した弁護士仲間が連行され約8時間、事情聴取されたこともあった。

 高血圧を患う江さんは北京での治療を望むが、当局者が連れて行く地元の病院しか受診できない。「彼らが一緒だとまともな治療も、本当の診断結果も期待できない」とこぼす。

 裁判で、江さんは罪を認め「人としてやり直す」と述べたが、「それは自白を強要されたから。罪を認めないと拷問が繰り返された」と明かす。

 殴られるのは日常茶飯事。一番つらかったのは睡眠制限だった。「朝から深夜まで何度も事情聴取が続き、終わっても横になれない。『真実を話していない』と言われ、彼らが言う通りに供述しないと座ったまま反省するよう強制された」。法廷で語った内容も覚えるまで繰り返させられた。

 習近平指導部は「依法治国」(法に基づく統治)を掲げるが、「そんなのはうそっぱちだ。本来、法律は公権力を制限するものだが、今は市民の自由を制限し、公の力を無限に拡大している」と江さんは批判する。「習氏の言う法治は、法で市民を抑え込むという意味だ」

■弁護士の子強制退学

 当局の圧力は人権派弁護士の家族にも及ぶ。

 709事件に絡んで国家政権転覆罪に問われ、懲役4年6月の実刑判決を受けた人権派弁護士、王全璋さん(43)の長男(6)は、入学したばかりの小学校から強制退学させられた。

 「9月2日に入学したのに、5日に学校から呼び出され、もう来ないでほしいと言われた。通学できたのはわずか4日だった」と王さんの妻、李文足さん(34)は声を落とす。学校から詳しい説明はなかったが「夫の話を聞かれた。警察から働き掛けがあったのは間違いない」と確信する。

 夫の無実を訴える李さんは、これまでも当局からさまざまな嫌がらせを受けてきた。長男は幼稚園に通えない状態が続き、昨年5月にようやく受け入れる幼稚園が見つかった。それが今度は小学校からの通学拒否。李さんは「海外メディアの取材を受けるな、各国大使館と接触するなという警察の圧力だ。子どもの進学問題を交渉カードにしようとしている」と憤る。

 海外から注目される709事件の関係者を北京から遠ざけようとする当局の意図も感じる。「学校に通うことも、北京に住むことも私たちの権利だ。これからも闘い続ける」。李さんの決意は固い。 (北京・川原田健雄)

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