NHKの公共性 信頼揺らぐ「かんぽ」報道

西日本新聞 オピニオン面

 公共放送としての独立性と公正が問われる事態だ。NHKは事実関係を詳細に検証した上で公表し、視聴者の信頼をつなぎ留める努力をすべきである。

 NHKの報道番組「クローズアップ現代+(プラス)」は昨年4月、かんぽ生命保険による不正販売問題をいち早く取り上げた。これに日本郵政グループ側が抗議したことを巡り、NHKは番組制作現場から最高意思決定機関の経営委員会まで巻き込む混乱に陥っている。

 番組の内容は、郵便局員が販売ノルマを達成するために不適切な営業を重ねる実態を告発したものだ。放送直後の政府の郵政民営化委員会でこの問題が取り上げられ、かんぽ生命の副社長が内容をほぼ認めていた。

 日本郵政側はこの段階で、保険の不正販売問題に正面から取り組むべきだった。にもかかわらず、矛先をNHKに向けて抗議を重ねていた。一連の日本郵政側の行動にはあきれて言葉もない。

 NHKの制作現場は続編用の情報提供を呼び掛ける動画をインターネット上に投稿し、昨年8月の放送を目指したが、日本郵政側の抗議を受けたNHKは放送時期を未定に変更した。実際に続編が放送されたのは、かんぽ生命で不正契約が多発している実態を日本郵政側が認めた後の今年7月のことだった。

 外部の圧力に屈して放送を見合わせたのなら、公共放送の理念を揺るがす行為だ。放送法は不偏不党を定めている。

 NHKの上田良一会長は3日の記者会見で「自主自律や番組編集の自由が損なわれた事実はない」と否定した。ただ、日本郵政側から抗議を受けたNHKの経営委員会が、上田会長を厳重注意し、上田会長は会長名で事実上謝罪する文書を日本郵政側に届けたという。どちらも、極めて異例の対応であると言わざるを得ない。

 日本郵政の鈴木康雄上級副社長は、NHKの監督官庁である総務省の元事務次官だ。古巣への影響力をちらつかせ圧力を加えたのなら言語道断である。

 また鈴木氏は3日、NHKの取材手法について「暴力団と一緒」との言葉を使い批判した。一般の感覚と懸け離れた官僚OBのおごりはないだろうか。

 新聞通信調査会のメディア信頼度調査でNHKは毎回、新聞や民放テレビを上回り、トップの座を守り続けている。それはなぜか。国家権力や広告主など特定の個人・団体から不当な影響を受けないよう経営を受信料制度で守られ、視聴者の信頼に応えようとする報道や番組を提供してきたからではないのか。

 その信頼を損ねては公共放送は成り立たないと確認したい。

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