速度+バランス+歩幅+リズム→100点満点で数値化 歩行能力を「見える化」する リハビリ意欲向上に効果 病院や介護施設、導入相次ぐ

西日本新聞 医療面 井上 真由美

記者の歩行測定結果 拡大

記者の歩行測定結果

 歩くことは生活の基本-。歩く速度やバランス、歩幅などを数値化して歩行能力を「見える化」することで、リハビリテーションや運動の効果を高め、高齢者の生活の質の維持につなげているという。取り組みの現場を訪ねた。

 「推進力が6点アップ。リハビリの成果が出てます。まだまだ伸びます」。9月上旬、熊本市北区の武蔵ケ丘病院リハビリ室で、理学療法士藤井廉(れん)さん(29)の言葉に、入院中の女性患者(82)が笑顔を見せた。

 7月中旬に自宅で転んで股関節を骨折し、人工骨頭置換手術を受けた。8月から約2カ月間、同病院に入院。関節の可動域を広げるリハビリなどに向き合った。つえに頼りがちになる面もあったが、「点数が上がると励みになる。頑張らんば」と女性患者。

 同病院は2017年、歩行能力を測定する機器「アユミアイ」を導入。重さ約20グラムの機器をベルトのように腰に着けて10メートル程度歩くと、推進力、速度、歩幅、バランス、リズムなどが数値化され、100点満点で評価される。週1回、患者に使い、歩行能力の変化とリハビリ効果を実感してもらっている。

 同病院でこの測定器を使用した患者50人は、そうでない50人に比べ、リハビリへの意欲が高く、気分の落ち込みが小さかった。藤井さんは「これまで歩行状態は専門職が視診で評価する部分が大きく、客観性が足りなかった」と指摘。数値化でリハビリの必要性をより分かりやすく伝えられるようになったという。「どんなにいいリハビリも、患者のやる気がなければ効果は薄い。意欲向上が効果的なリハビリと運動習慣の定着につながっている」

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 アユミアイは、全国で介護予防特化型デイサービスを展開する早稲田エルダリーヘルス事業団(東京)が1式36万円で販売。全国の医療機関や介護施設、自治体など約150カ所に導入され、同社以外も同様の機器を扱っている。

 記者(48)も測定してみると総合評価は73点。福岡市のデイサービスで取材した要支援2の女性(82)と同点だった。速度が遅く、右に傾くなどバランスも悪いと分かった。腰痛治療中とはいえ、あまりの低評価を嘆いていると、藤井さんに「お尻の右側の筋肉を鍛えましょう」と励まされた。

 同社は今秋にも、福岡や熊本の医療機関などと協力して、歩行時の足の動きと認知機能低下の相関についての研究を始める予定だ。協力する医療法人相生会(福岡市)の浦江隆次代表(70)は「歩幅と認知機能の低下の関係は既に指摘されているが、歩行能力測定でより早期に、簡単に認知症のリスクを捉えられるようにしたい」と意気込む。

 歩行能力の数値化を治療に活用する大分大医学部の津村弘教授(整形外科)は「歩行能力の低下は循環器や呼吸器などの疾患、認知機能に関係し、要介護リスクも増大させる。歩行の衰えを早めに見つけられれば、身体機能や生活の維持に役立てられる」と期待している。

 (井上真由美)

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