星条旗に包まれたひつぎの前で

西日本新聞 社会面

 星条旗に包まれたひつぎの前で、褐色の体を横たえ、いつまでもその場を離れようとしない一匹の犬。こんな写真が8年前、全米で注目を集めた。戦死した米軍兵士の葬儀に家族の一員として参列したラブラドルレトリバーが、亡きあるじが眠るひつぎに寄り添ったのだ。翻訳出版された米国の自然人類学者による「死を悼む動物たち」(草思社文庫)で紹介されたエピソードである。

 人間と同じような感情が果たして動物にあるのか。言語が通じない以上、その答えを科学的に導き出すのは容易ではない。悲しみ、愛情、憎悪の念…。心のひだを読み取る力は、人のみがなせる業か、いや、そんなはずは-。同書ではネズミやウサギ、クマ、ゾウ、クジラにいたるまで、「死」に接した際に見せる行動が興味深く描かれている。

 涼しくなった秋の夜長。こんな本を手に、身近な生き物の心の内に思いを巡らしてみるのもいい。 (岩崎拓郎)

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