ギャンブル依存 傷深く 借金、犯罪 語り向き合う 福岡市のリハビリ施設

西日本新聞 社会面 小林 稔子

ギャンブル依存症者の家族らでつくるグループ「ギャマノン福岡」のメンバー。福岡市内で定期的に集まり、家族や自身の近況を話している 拡大

ギャンブル依存症者の家族らでつくるグループ「ギャマノン福岡」のメンバー。福岡市内で定期的に集まり、家族や自身の近況を話している

 カジノを含む統合型リゾート施設(IR)整備に向け、政府はカジノ事業者の監督などを担う「カジノ管理委員会」の国会同意人事案を今国会に提出する。長崎など全国で誘致活動が活発化し、開業に向けた動きが着々と進んでいるが、懸念されるギャンブル依存症への対策は十分とは言えない。政府の2017年度全国調査によると、依存症経験が疑われる人は推計320万人。依存症の人らが共同生活をしている福岡市のグループホーム「ロイスふくおか」に入居している男性(32)も、その一人だ。

 「初めてしたスロットで、5千円が30万円になったんです」。男性は18歳のとき、当時の職場の先輩に誘われて行ったスロット店でギャンブルにはまった。

 当時の給料は月16万円。「短時間でこんなにお金が手に入るのか」。半年後には毎日閉店まで1人で打ち続けるようになった。当初は行くたびに5、6万円勝っていたが、次第に負けることが多くなり、資金が底をついた。消費者金融に手を出し50万円を借金。親から返済のために渡された50万円もスロットに消えた。

 もっと軍資金がほしい-。男性は他人のかばんを置引し、19歳の時に逮捕された。有罪判決を受け執行猶予中もパチスロ通いはやめられない。お金が底をつくと犯罪に走る。麻薬の売買にも手を染め、刑務所への入所を繰り返した。

 30歳だった3回目の刑務所出所後、介護施設で働き始め、ギャンブル依存症者の自助グループにも参加した。「二度とギャンブルをしない」。固く決意したはずだった。だが、自分の意志とは反対に、足はパチスロ店に向かった。

 「もう、死のう」。自責の念に駆られた男性は廃虚で首をくくろうとしたこともあった。苦悩していたとき、保護観察官からNPO法人ジャパンマック(東京)が運営する「ロイスふくおか」に入居することを勧められ、仲間との集団生活が始まった。

   ◇    ◇

 当初、自分と同じような経験を明るく話す仲間に対し、「笑いながら話しているのが信じられなかった」。同法人が運営する福岡市の依存症リハビリ施設「ジャパンマック福岡」で毎日午前と午後に開かれるミーティングに参加し、依存症への理解を深め、自分と向き合い続けた。

 同施設では同じように依存症に陥っていた経験者がスタッフとして働いている。仲間の話を聞き、自分の話をするうちに、半年後にはギャンブル依存に苦しんだ過去を経験として笑って話せるようになったという。「スタッフや仲間が共感してくれたのが大きかった。言いづらかった自分の罪も受け止めてくれた」

 自助グループを通じ外部とつながりも増え、次第にギャンブル以外の楽しみが増えていった。ジャパンマック福岡の岡田昌之統括施設長(58)は「人間関係を円滑にするよう、人のことをよく考えてくれるようになった」と男性の変化を話す。

 男性は現在、施設スタッフの補助や電話対応、ミーティングの司会も担っている。「自分と同じように苦しんだ人の助けになりたい。そのためにも自身の経験を伝えていくことが大事」。男性は回復の道を歩み続けている。 (小林稔子)

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