仕事柄、かつては365日、これを身に着けていた…

西日本新聞 オピニオン面

 仕事柄、かつては365日、これを身に着けていた。あまり良い記憶はないが、消えていくのはどこか寂しい。ポケットベル(小型無線受信機)。先月末、唯一残っていた東京の事業会社のサービスが終了した

▼鬼デスクの声を思い出す。ポケベルが鳴って会社に電話を入れると「今どこにいるんだ」「火事現場に急行しろ」「早く会社に戻って原稿を書け」…。ただし、対抗策もあった

▼デスクの機嫌が悪そうな時は電波が届かない地下の喫茶店で長く過ごしたり、近くに公衆電話がなかったと偽って応答しなかったり

▼数字を送信できる機種が出て以降、若い人の間では「0840」(おはよう)「14106」(あいしてる)などの語呂合わせが流行。個人同士が暗号でつながる「ベル友」関係にも妙味があった

▼今はスマホ全盛時代。地下でも大体電波はOK。人は四六時中、ネットでのやりとりや情報探しなどに熱中する。東京の地下鉄ではこんな文句のポスターも見る

▼「スマホ渋滞、させてませんか」。電車を乗り降りする時もホームを歩く時もスマホしか見ていない。そんな人のせいで混雑が増幅しているそうだ。便利な世の中でも、心は「3341」(さみしい)のか。今日は二十四節気の寒露。草花に冷たい露が宿る、この頃から秋は本番へ。しばしスマホに「8181」(ばいばい)して瞑想(めいそう)や読書にふける。そんな時間を持ちたい季節だ。

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