香港の混乱 「高度な自治」守ってこそ

西日本新聞 オピニオン面

 香港の混乱が緊迫度を増している。市民の大規模デモなどが長期化する中、香港政府は「緊急状況規則条例」(緊急条例)を半世紀ぶりに発動し、デモ参加者のマスク着用を禁じる異例の強硬措置に動いた。民主派はこれに反発して政府との対決姿勢を一段と強めている。

 デモ隊による過激な破壊行動は是認できないが、混乱の背景には、香港の高度な自治をうたう「一国二制度」の形骸化が進む現状への不満や危機感が横たわる。香港政府とその後ろに控える中国政府は、市民の声に謙虚に耳を傾け、あくまで対話による解決を目指すべきだ。

 中国の習近平政権は建国70年を迎えた今月1日、北京で大規模軍事パレードを行い、国力の増進を誇示した。香港ではそれを見計らうようにデモが活発化し、警官隊との衝突が続く。

 1日と4日には警官が発砲した実弾で高校生らが負傷した。香港政府は「デモ隊の襲撃で警官が身の危険を感じた」として発砲を正当化し、緊急条例による「覆面禁止法」施行で取り締まりを強化した。デモ隊は警察が放つ催涙弾の煙や、人物を特定されることによる摘発を避けるため、マスクで顔を覆うケースが多い。そこに着目してデモを封じ込める作戦のようだ。

 緊急条例では、行政長官が「緊急事態や公共の安全に危害が及ぶ状況」と判断した場合、議会の手続きを経ずに必要規則が制定できるとされる。しかし警官の発砲を詳しい検証もなく容認し、市民の身なりまで制限する措置は行き過ぎではないか。

 一連の混乱は容疑者の中国への移送が可能になる逃亡犯条例改正案に端を発し、林鄭月娥行政長官は9月に同改正案の撤回を表明した。それでもデモが続く理由を見据えるべきだ。

 香港の発展の原動力は、英国統治時代からの自由な風土にある。それが中国政府寄りの歴代行政長官の下、市民の監視や言論統制的な動きが目立つようになった。市民側はこのままでは中国共産党体制に組み込まれるとして普通選挙実施などを求める。言い換えれば、デモの本質的な矛先は香港への関与を強める習政権に向けられている。

 習政権は混乱への直接介入を避けつつ、香港政府の措置を支持し、市民の要求は排除する構えのようだ。米国が市民側を支持し、香港への関税などの優遇措置を見直す動きを見せていることにも猛反発している。

 だがここは、中国政府自らが香港政府に市民との対話を強く促すなど冷静に対処すべきだ。「一国二制度」が有名無実化すれば香港の発展は揺らぎ、中国に対する国際社会の視線も厳しさを増すばかりだろう。

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