思春期病棟 心と向き合う 虐待や自傷 医師が福祉や地域と連携 福岡に開設 九州8ヵ所目

西日本新聞 くらし面 下崎 千加

児童思春期病棟がある九州の病院 拡大

児童思春期病棟がある九州の病院

開放的な造りののぞえの丘病院 堀川直希院長

 虐待を受けたり、自傷行為や摂食障害があったりして、心の治療が必要な子どもが入院する精神科の「児童思春期病棟」が1日、福岡県で初めて久留米市に開設された。地域との連携が欠かせず「最低でも各県に1カ所は必要」とされるが、採算性などの問題から九州には佐賀、長崎、熊本、宮崎4県の7病院にしかなかった。子どもの症状に詳しい精神科医や心理士らが時間をかけて回復に導き、親の支援にも取り組む。

 まだ生えそろっていない芝生の広場に、秋の陽光が降り注ぐ。院内は木を基調としたシックな造りで“病院らしさ”はない。病棟を開設した精神科専門の「のぞえの丘病院」は、築約50年と老朽化していた前身の久留米厚生病院から患者を移す形で9月に開業したばかりだ。

 全75床のうち27床で、10月1日から診療報酬(医療の公定価格)の「児童・思春期精神科入院医療管理料」を算定し始めた。子どもの治療経験がある精神科医や精神保健福祉士、公認心理士をそろえ、浴室や食堂などは大人の患者もいる病棟とは別に設けた。

 「ここは浴室。ここは僕の部屋です」とはにかみながら案内してくれたのは14歳の少年。4畳ほどの個室には漫画本がベッド脇に積まれていた。症状が落ち着いたため、刃物などの危険物やスマートフォンなどを除き私物の持ち込みは許されている。「屋外の散歩もできるようになりました」

 児童相談所を通じて9月に入院してきた患者もおり、8~17歳で既に満床だ。多くは、虐待で保護されたが施設での集団生活が難しかったり、自分や人を傷つけたり、ネット依存が深刻化したりした子たち。入院期間が2年近い例もあり、傷の深さを物語る。

 厚生労働省によると、同病棟は昨年7月現在、38病院が設置し、病床は10年前の2倍の1268床に増えた。九州ではこの3年間で4病院増えたが、大分、鹿児島両県にはない。

 全国児童青年精神科医療施設協議会代表の新井卓医師は「ゼロの県が多く、まだまだ足りない」と言う。自身が勤める神奈川県立こども医療センターでは他に県内3病院に病棟があるが、入院まで平均4~5カ月待ちの状態という。

 国は2年に一度の診療報酬改定のたびに上乗せして開設を促してきたが、十分ではない背景に、子どもを診られる精神科医らスタッフの不足がある。親だけでなく、福祉、教育、地域との協力も欠かせない。

 「投薬で治るものではなく、相当な手間暇が掛かる。稼げる部門ではないため、公立病院でも手を出しにくい」と新井医師は分析。のぞえの丘には「さまざまな機関と連携したり、スタッフの研修を受け入れたりして、福岡や九州におけるノウハウを蓄積してほしい」と期待している。

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