「草小積み」守る金婚夫妻 森本さん 阿蘇の冬支度

西日本新聞 熊本版 佐藤 倫之

阿蘇五岳を一望する北外輪山の一画で、昔ながらの手法で草小積みをこしらえる森本さん夫妻 拡大

阿蘇五岳を一望する北外輪山の一画で、昔ながらの手法で草小積みをこしらえる森本さん夫妻

3日掛かりで完成させた草小積み。観光客らも見学に訪れるという

 阿蘇の大草原では長い冬に備え、農家の多くが大型機械を使って牛馬の餌となる山野草を刈り、ロール状に備蓄する作業を始めている。農業全盛の昭和時代には、草束を小屋状に積み上げる「草小積(くさこづ)み」が林立していた。令和の時代となり、その風景は数少なくなったが、今年金婚式を迎えた阿蘇市の森本幸光さん(81)、ミサ子さん(76)夫妻は今も営みを続ける。

 今季の作業は4日から始まった。北外輪山の大観峰近くにある牧野の一画。ネザサが多く茂り、刈り取りと束づくりに2日間。6日に1基を組み上げた。

 「束には大小、裏表があってね」。ミサ子さんから手渡された束を、幸光さんが円心状に並べ、踏み固めていく。雨よけのススキをかぶせ、高さ約2メートルの小積みを完成させた。

 結婚したのは1969(昭和44)年9月10日。農家に生まれた幸光さんは10人きょうだいの長男。ミサ子さんも農家で育ったが、結婚前は国民宿舎に勤務。新婚夫妻にとって「初めての大仕事」が草小積みだった。

 ミサ子さんが振り返る。

 「おしゅうとめさんが午前2時半ごろ起きだし、大慌てで一緒に弁当づくり。明け方4時ごろからライトバンで山へ。昔は牛を連れ、歩いて登ったそうです。一家総出で雑鎌(大鎌)で刈り、束ねていくんですが、束の大きさにびっくり。夫に支えられ『2人で一人前』と冷やかされました」

 夫妻は現在、長男一家らと暮らし、水田2ヘクタールを耕し、牛3頭を飼う。新婚当時は十数頭飼っていたので、一冬越すために15基の草小積みが必要だった。

 幸光さんの亡父の口癖は「牛だけは手放すな」。子どもの養育や突然の出費に備え、財産として守れ-。夫妻はその教え通り、昔ながらの手法で牛を飼い、草小積みを作り続ける。

 草小積みは近年、世界農業遺産、阿蘇観光の視点からもクローズアップされている。「私たちにとっては年中行事のようなもの。作業は大変だけれど、興味を持ってくれる人もいてね」と幸光さん。夫妻は月末までに5基作る予定で、温泉旅行で労を癒やす日を楽しみにしている。(佐藤倫之)

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